研究課題/領域番号 |
23K13727
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研究機関 | 公益財団法人相模中央化学研究所 |
研究代表者 |
森迫 祥吾 公益財団法人相模中央化学研究所, その他部局等, 副主任研究員 (70874840)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 低配位化学種 / メタリレン / 小分子活性化 / 典型元素 / 分子触媒 |
研究実績の概要 |
クロスカップリング反応に代表される均一系触媒を用いた分子変換反応は,有機合成化学において革新をもたらした一方,触媒中心には稀少な遷移金属元素が用いられており,豊富元素を用いた代替手法の開発が国際的な重要課題とされている。低毒性かつ豊富に存在する典型元素は触媒中心として理想的であるが,遷移金属触媒を代替・凌駕するような典型元素触媒の合理的な分子設計指針は確立されていない。本研究課題では,豊富元素を活用した分子変換反応の開発を見据え,14族二価化学種であるメタリレンの緻密な電子状態制御に不可欠な分子設計指針の構築および新規反応性の開拓を目的として研究を開始した。当該年度は,地殻中二番目に埋蔵量が多いケイ素に着目し,二価ケイ素化学種(シリレン)を標的分子に定めた。具体的には,高い反応性が期待されるアミノ基およびアリール基が置換した環状シリレンの開発に着手した。標的分子は理論化学計算により芳香族性を示し,安定化の一助となることが示唆された。シリレン前駆体であるジクロロシランの合成,構造解析に成功し,現在,化学還元によるシリレンの発生検討を行っている。また,非常に高い反応性が期待される環状ジアリールシリレンの開発にも取り組み,前駆体であるジクロロシランの合成を達成した。現在,ジクロロシランの単離および還元によるシリレンの発生検討を行っている。類似のジアリール骨格を有する二価ゲルマニウム化学種(ゲルミレン)についても合成を行い,溶液中低温下でゲルミレンが発生していることを確認した。ゲルミレンに中性配位子を配位させることで室温にて安定なゲルミレンの単離に至った。現在,ゲルミレンの反応性について調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,地殻中二番目に埋蔵量が多いケイ素の二価化学種であるシリレンの合成に着手した。シュレンクテクニックおよび特殊ガラス器具を活用し,標的分子の前駆体であるジクロロシランの合成を達成した。今後は,合成したジクロロシランの還元によるシリレンの発生検討を行う。また,ゲルマニウムの二価化学種であるゲルミレンの合成にも着手し,中性配位子をゲルマニウム上に配位させることで室温にて安定なゲルミレンの単離に至った。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に合成した標的化合物前駆体であるジクロロシランに対し,ナトリウムやカリウムなどの還元剤を作用させることでシリレンの合成検討を行う。二配位のシリレン状態が不安定な場合は,当該年度の知見に倣い,中性配位子を用いた配位安定化による単離検討を行う。また,当該年度に単離したゲルミレンの反応性についても調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に機器・備品購入及び複数の国際学会発表を予定しているため,当該年度の支出を予定よりも抑えることとした。また,当該年度の途中に所属異動を行い,研究環境の構築に時間を要したため,予定よりも使用額が少なくなった。 次年度の使用計画としては,空気不安定化学種の取り扱いに必要な実験機器・備品類の購入・修理・保守費用,ならびに試薬類及び特殊ガラス器具の購入に使用する。当該研究機関にて所持していない分析機器による物性測定等を行う必要があるため,近隣施設や大型放射光施設にて,各種スペクトル測定やX線結晶構造解析を行うための国内旅費,機器利用費用および実験補助の謝金を申請した。また,ケイ素や典型元素の専門家が集う国際学会や,毎年開催の国内討論会(基礎有機化学討論会,有機典型元素化学討論会,日本化学会春季年会)にて情報収集や研究討論を行うため,旅費及び学会参加費に使用する。
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