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2023 年度 実施状況報告書

キュバン型錯体の配列制御を活用した二酸化炭素還元触媒系の構築

研究課題

研究課題/領域番号 23K13763
研究機関京都大学

研究代表者

伊豆 仁  京都大学, 化学研究所, 助教 (10896393)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワード二酸化炭素還元 / 金属錯体 / 金属-硫黄クラスター
研究実績の概要

本研究は、金属錯体を多孔性材料に規則配列させた複合化触媒を創出し、その複合化触媒を用いて二酸化炭素(CO2)を還元し化学燃料として利用可能な炭化水素の生成を目指すものである。初年度である本年度は、細孔壁面に2,2’-ビピリジンを規則配列させたメソポーラス有機シリカ(bpy-NT)への[Mo3S4Fe]錯体の担持手法の確立及び合成した複合化触媒のCO2還元能の調査を行った。
複合化触媒の合成は多段階な合成戦略を用いることで達成し、bpy-NT上に[Mo3S4Fe]骨格が形成されていることはX線吸収微細構造(XAFS)測定によって確認した。また、反応に用いる金属錯体の量を変えることで、bpy-NTへの担持量を自在に制御可能なことも見出した。
複合化触媒のCO2還元能の調査は、化学還元剤を用いた反応系を利用し行った。その結果、CO2還元によるメタンの生成が確認でき、さらに炭素生成物はメタンのみが観測され、反応中間体と考えられるCOは観測されなかった。比較実験として、多孔性材料に担持されていない[Mo3S4Fe]錯体を用いて同様な反応条件で検討を行ったところ、メタン及びCOの生成が観測され、メタンの生成量を比較すると複合化触媒の方が多かった。これらの結果は、[Mo3S4Fe]錯体を多孔性材料に担持することで、基質や反応中間体などの物質拡散の制御ができ、反応性が向上したことを示唆する。
よって今後の研究では、これらの知見を踏まえ、電気化学的アプローチを用いたCO2還元反応による炭化水素生成系の確立を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度は金属錯体を多孔性材料に規則配列させた複合化触媒の合成及び化学還元剤を用いたCO2還元反応への展開に取り組んだ。
金属錯体は生体内の電子伝達物質を模倣した[Mo3S4Fe]錯体に着目し、多孔性材料には細孔壁面に2,2’-ビピリジンを規則配列させたメソポーラス有機シリカ(bpy-NT)を使用した。Bpy-NTへの[Mo3S4Fe]錯体の導入は多段階な反応によって達成した。具体的には、まず金属頂点が1つ欠損した[Mo3S4]錯体をbpy-NTに担持し、bpy-NT上の[Mo3S4]錯体に対して反応点であるFeイオンを導入することで目的の複合化触媒を得た。1段階目の反応でMo3S4骨格を維持していること及び、2段階目の反応によってFeイオンが導入されMo3S4Fe骨格が形成されていることはX線吸収微細構造(XAFS)測定によって確認した。また、Mo3S4Fe錯体の導入量は元素分析によって確認をし、おおよそ30mol%以下の範囲で任意の量を担持可能なことも見出した。
合成した複合化触媒のCO2還元能を調査するために、化学還元剤を用いたCO2還元反応を行ったところ、CO2還元によるメタンの生成が確認できた。また、炭素生成物はメタンのみが観測され、反応中間体と考えられるCOは観測されなかった。比較実験として、多孔性材料に担持されていない[Mo3S4Fe]錯体を用いて同様な反応条件で検討を行ったところ、メタン及びCOの生成が観測され、メタンの生成量を比較すると複合化触媒の方が多かった。これらの結果は、[Mo3S4Fe]錯体を多孔性材料に担持することで、基質や反応中間体などの物質拡散の制御ができ、反応性が向上したことを示唆する。
以上より、初年度は複合化触媒の合成及びCO2還元能の調査に成功しており、順調に研究が進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

初年度の研究成果により、本研究の要となる金属錯体触媒を多孔性材料内に規則配列させた複合化触媒の合成及び、その化学還元剤を用いたCO2還元によるメタン生成に成功している。そこで今後は、複合化触媒を用いたCO2還元による炭化水素生成反応に重点を置き研究に取り組む。
具体的には、引き続き化学還元剤を用いたCO2還元能の調査を行い、より高い触媒能を発現可能な反応条件を見出す。現状でメタンの生成が確認できているので、より高い選択性でのメタン生成を目標とする。
化学還元剤を用いた検討に加えて、2024年度からは電気化学的手法によるCO2還元能の調査も並行して取り組む。反応条件は化学還元剤を用いた検討で良好な結果を示した条件を優先的に採用する。その際には、複合化触媒を電極上に固定することで作用電極とし、CO2及びプロトン源などを十分に溶解させた有機溶媒中で電解反応を行う。また、複合化触媒は固体触媒であるので、その利点を最大限に活かせる気相セルを用いての反応性の検討も行う。
2024年度は上述のように、初年度に合成した複合化触媒によるCO2還元反応に取り組み、本研究の目的である高選択的なCO2還元による炭化水素生成を達成する。

次年度使用額が生じた理由

触媒能検討のため、次年度に電気化学セルの購入を予定している。予算確保のため、本年度の支出は低くおさえられている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Synthesis, Characterization, and Catalytic Activity of a Cubic [Mo<sub>3</sub>S<sub>4</sub>Pd] Cluster Bearing Bulky Cyclopentadienyl Ligands2023

    • 著者名/発表者名
      Izu Hitoshi、Bhave Devashish Girish、Matsuoka Yuto、Sameera W. M. C.、Tanifuji Kazuki、Ohki Yasuhiro
    • 雑誌名

      European Journal of Inorganic Chemistry

      巻: 26 ページ: -

    • DOI

      10.1002/ejic.202300399

    • 査読あり
  • [学会発表] [Mo3S4]クラスター部位を有する修飾電極の創出2024

    • 著者名/発表者名
      渡部 凜、伊豆 仁、谷藤 一樹、近藤 美欧、正岡 重行、大木 靖弘
    • 学会等名
      日本化学会 第104春季年会
  • [学会発表] かさ高い Cp 配位子を有する[Mo3S4M] (M = Rh, Ir)クラスターの合 成と C-H ボリル化反応への応用2024

    • 著者名/発表者名
      伊豆 仁、下山 さやか、谷藤 一樹 、大木 靖弘
    • 学会等名
      日本化学会 第104春季年会
  • [学会発表] Synthesis and Characterizations of a Cubic [Mo3S4Pd] Cluster Bearing Bulky Cyclopentadienyl Ligands2023

    • 著者名/発表者名
      Hitoshi Izu、Devashish Girish Bhave、Yuto Matsuoka、W. M. C. Samera、Kazuki Tanifuji、Yasuhiro Ohki
    • 学会等名
      錯体化学会 第73回討論会
  • [産業財産権] クラスター錯体およびその製造方法、そのクラスター錯体を構成ユニットとして有する高分子触媒およびその製造方法、ならびにその高分子触媒を含む電極およびその製造方法2024

    • 発明者名
      大木靖弘,近藤美欧,正岡重行,谷藤一樹,伊豆仁,渡部凜
    • 権利者名
      大木靖弘,近藤美欧,正岡重行,谷藤一樹,伊豆仁,渡部凜
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2024-030533

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公開日: 2024-12-25  

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