研究課題/領域番号 |
23K13781
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松川 裕太 立命館大学, 生命科学部, 助教 (10848526)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 電池 / クロロフィル / 有機合成 / エネルギー / 酸化還元 / 窒素系複素芳香環 |
研究実績の概要 |
資源・エネルギー問題解決策の一つである再生可能エネルギー利用の達成には大規模蓄電池が必須ですが、現行の蓄電池はエネルギー担体 (= 活物質) が重金属であり、価格や環境負荷、埋蔵量に関する懸念があることから、これらを解消する蓄電池開発が急務といえます。これに関して最も理想に近いレドックスフロー (RF) 電池が注目を集めていますが、活物質が重金属であるほか、初期費用が高いといった課題があります。そこで、クロロフィル骨格による金属不使用の正極活物質を創出することで、非枯渇性資源によるカーボンニュートラル、低環境負荷、低価格で持続可能なRF電池開発の達成を目指し、若手研究として取り組みました。2023年度では、当該用途におけるクロロフィル誘導体の特性を明らかにする目的で、まず緑色光合成細菌の一種であるSpirulinaから抽出したクロロフィル-aより鍵中間体としてメチルピロフェオホルビド-a (1) を得、さらにこれを原料としてメチルピロフェオホルビド-d (2)、およびその3位をアセチル基 (3) としたものを合成しました。続いて孔径1.25 nmのセルロース膜を用い、tBu4N・ClO4を含むTHF溶液中で透過試験を行ったところ、6時間後においてクロロフィル誘導体は全く透過されていなかったことから、同セルロース膜によって溶出が阻止できることが示されました。さらに、化合物 1 についてジクロロメタン中450 mV (vs Fc/Fc+) 付近の酸化還元電位においてサイクリックボルタンメトリー測定を100サイクル行ったところ、測定開始から終了にかけて可逆ピークを示したことから、同電位における酸化還元系の高い安定性が示されました。また、クロロフィル誘導体の酸化還元系について知見を得るため、安定な酸化還元系を示すフェロセニル基をやテトラゾリオ基をもつ誘導体を新たに合成しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クロロフィル誘導体について、膜透過試験による不透過性、および多サイクルのサイクリックボルタンメトリー測定による酸化還元系の安定性を明らかにしたほか、各種誘導体の合成経路の最適化、および安定な酸化還元系を示す官能基をもつクロロフィル誘導体の新規合成を達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
クロロフィル誘導体のバルク酸化により酸化体合成を目指す。酸化体の安定性に関する知見を得るため、窒素系複素環化合物のエネルギー移動に関する研究を継続し、クロロフィル骨格への応用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度出張分が次年度支払いとなったこと、および当初予定されていた出張が中止になったため。次年度使用額は出張支払および試薬購入に充当する方針である。
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