研究課題/領域番号 |
23K13816
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 弘明 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90804427)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / ホスト構造 / マンガン酸化物 / 正極 / マグネシウム蓄電池 |
研究実績の概要 |
アルコール溶液プロセスにより、2×3トンネル構造を有するRomanechiteの合成に成功した。還流条件下での合成では2×2トンネル構造のHollanditeが主相として得られたが、合成条件の検討により室温条件でRomanechiteが高い選択性で得られることを見出した。X線回折測定の結果、本プロセスで得られた粒子は従来の水熱法で合成される粒子と比較して結晶子サイズが小さかった。また電子顕微鏡観察では、従来の水熱法で合成されるRomanechiteの粒子はロッド状の形態を示すが、アルコール溶液プロセスで合成されたものはプレート状の粒子形態を示した。ナノ粒子化により、トンネル方向の結晶成長が抑制されたためと考えられる。 アルコール溶液プロセスで得られたHollanditeとRomanechiteナノ粒子のマグネシウム蓄電池正極特性評価を室温条件で実施した。本反応では電池セル内部の不純物の水などによって副反応が生じ、電気化学的に見積もられるMg挿入量と実際に挿入されるMg量が異なるため、正極性能評価にはMgの定量も必要である。エネルギー分散型X線分光により電極のMg量をMnに対する原子比で比較したところ、Romanechite構造へのMg挿入量はHollandite構造よりも多い値を示した。2×2トンネル構造はMg挿入時に対称構造から非対称構造へ不可逆に構造が歪むことが報告されており、構造変化によりマグネシウム挿入脱離が困難な構造になったと考えられる。一方2×3トンネル構造は非対称な構造であるため、Mg挿入過程における格子歪みが小さく、Mg挿入脱離挙動が高いまま維持されたと考えらえる。以上より、今回開発した非対称トンネル構造のRomanechiteがマグネシウム蓄電池正極として優れていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、2×3トンネル構造を有するRomanechiteのナノ粒子合成に成功し、2×2トンネル構造を有するHollanditeナノ粒子よりも優れたマグネシウム蓄電池正極特性を示すことを見出した。これは、マグネシウム挿入脱離挙動に対してより剛直な骨格であることが原因と考えらえる。以上を踏まえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、引き続き非対称トンネル構造のナノ粒子合成を進めると同時に、ナノ粒子正極の形態・界面制御に注力する。ナノ粒子は乾燥時の凝集により粗大な二次粒子を形成し、サイクル性などの正極特性が悪化するため、ワンポットグラフェン複合化や多孔質化を行う。また、電解液の分解反応を防ぐため、分解反応に不活性な元素のドーピングや、活物質表面へのフッ化物や酸化物によるコーティングを検討する。これらのナノ粒子正極に必要な要素技術をすべからく開発し、次世代蓄電池正極の設計指針を開拓する。
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