研究課題/領域番号 |
23K13819
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
池澤 篤憲 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80824953)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 炭素腐食 / カーボン酸化 / 微分電気化学質量分析法 / 電気化学 / その場測定 / DEMS |
研究実績の概要 |
次世代の定置用蓄電デバイスの正極として期待されている二機能性空気極の実用化に向けて、炭素の酸化腐食反応の抑制が課題となっている。 本研究では、これまで未開拓であったアルカリ電解液における炭素腐食反応の速度論を明らかにし、炭素腐食を抑制するための電極触媒設計指針を構築することを目的とする。その実現のため、溶解性が高くアルカリ水溶液において定量分析が困難であった二酸化炭素を、高い時間分解能で定量分析可能な新規微分電気化学質量分析(DEMS)系を構築する。2023年度は、イオン交換膜とマイクロリアクターを組み合わせた新規DEMS系を構築した、Ptにおける一酸化炭素酸化脱離反応を用いて、二酸化炭素検出特性を評価した。構築した測定系は、アルカリ水溶液においても、二酸化炭素発生のファラデー電流に対応した質量信号を示した。ファラデー電流と質量信号を関係付ける校正定数の算出に成功したことから、二酸化炭素発生の定量分析が可能であることが明らかとなった。また、セルの改良を行うことで、検出能を保ったまま時間的分解能を向上させることに成功した。構築した測定系を用いて、市販のPt担持炭素触媒および3種の酸化物触媒を担持した炭素の酸化腐食挙動を分析した。Pt担持炭素の腐食挙動が酸性条件と塩基性条件で異なることが明らかとなり、反応の律速段階が異なることが強く示唆された。酸化物触媒の炭素腐食反応活性が、酸素発生反応活性と関係していることが明らかとなり、酸素発生反応の中間生成物が炭素腐食反応に介在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度の目標である高い時間的分解能を有するDEMS測定系の構築に加えて、2024年度の目標である複数の触媒担持炭素触媒への適用と国際学会およびオープンアクセス誌での発表を達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に構築した質量分析系を用いて、触媒担持炭素酸化腐食挙動を分析を継続し、反応の律速段階を明らかにする。また、得られた結果に基づいて、炭素腐食を抑制可能な電極触媒設計指針を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
セルの構築が順調に進んだため、当初の予定よりもセル部材に対する支出が少なくなった。繰り越した予算は、触媒担持炭素腐食分析の加速のため、触媒合成用試薬の購入に支出する予定である。
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