• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

放線菌が細胞内に蓄積するウイルス様粒子の生物学的機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K13863
研究機関筑波大学

研究代表者

永久保 利紀  筑波大学, 生命環境系, 助教 (20826961)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード放線菌 / ファージ尾部様粒子 / リボソーム
研究実績の概要

当該年度においては、本研究課題の目的である放線菌のウイルス様粒子の機能解明に近づく研究成果があげられた。本研究課題で研究対象とする放線菌S. lividansが生産するウイルス様粒子SLPにHis6タグを付加し、Ni2+アフィニティクロマトグラフィーと定量プロテオーム解析に供することで、SLPに付随するタンパク質の網羅的な同定が可能になった。その結果、複数の機能未知タンパク質(W,X)が同定され、そのうちの2つがSLPをコードする遺伝子クラスターの近傍に位置する遺伝子によってコードされていることが明らかになった。これらのタンパク質のうち1つ(X)は、SLPが属するウイルス様粒子のクラスであるcontractile injections systemsの積荷タンパク質に特有のコアドメインを含んでいた。さらに、このタンパク質(X)はもう一方のタンパク質(W)のN末端領域と相互作用することも明らかになった。これらの結果は、上記の2つの機能未知タンパク質のペア(W,X)からなるタンパク質複合体が、SLPの積荷タンパク質であることを示唆している。また、上記タンパク質ペア(W,X)のうちタンパク質(W)を大腸菌で異種発現させたところ、大腸菌の生育が顕著に阻害されることも見出された。これは、タンパク質(W)が細菌細胞の生育に必須な分子に対して作用することを示唆しており、このタンパク質がSLPの機能の根幹をなす因子の有力な候補として挙げられた。加えて、上記成果のうち単離SLP画分を用いたプルダウン-プロテオーム解析の結果を含む研究論文が、米国微生物学会(ASM)が発行するジャーナルに受理された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題で着目する放線菌のウイルス様粒子とリボソームの相互作用に関して、そのメカニズム解明の鍵となるタンパク質(W,X)の同定に成功したため、本研究課題は概ね順調に進展しているといえる。タンパク質(W)は大腸菌での異種発現が困難であったが、コンストラクトや発現条件の検討により、タンパク質間相互作用解析の実施に十分な量のタンパク質(W)を得ることができ、さらにこれを用いてタンパク質ペア(W,X)間の相互作用を示すことができたことは大きな進展といえる。加えて、タンパク質(W)が大腸菌の生育を阻害することが見出されたことは、本研究課題の遂行に大きく寄与する発見である。この現象に着目して本タンパク質の機能を詳細に明らかにすることで、謎の多いウイルス様粒子の機能に関する普遍的かつ新たな概念の提唱につながることが期待される。

今後の研究の推進方策

今後は、前年度に同定したタンパク質(W,X)の詳細な機能解析を実施する予定である。特に、本研究課題で着目するSLP-リボソーム間の相互作用と上記タンパク質ペアの関連について調査を進める。タンパク質(W)が大腸菌に対して生育阻害を引き起こすことに着目し、この生育阻害効果が大腸菌のリボソーム機能に与える影響を調べる予定である。タンパク質(W)とリボソームの関連が明らかになった場合、同様の現象が元々の生産菌S. lividansのリボソームについても見出されるかどうかを解析する。また、これらと並行して、タンパク質ペア(W,X)がSLPに付随するメカニズムについても解析を進める。具体的には、これらのタンパク質とSLPを構成するサブユニットタンパク質間の相互作用の検出を試みる。代表者の先行研究において、タンパク質(X)と同じコアドメインを有するタンパク質が、SLPが属するウイルス様粒子のクラスであるcontractile injection systemsの基部スパイク複合体と相互作用することで上記粒子に搭載されることが示唆されているため、これを参考にしてSLPの基部スパイク複合体とタンパク質(X)の相互作用を検証する。

次年度使用額が生じた理由

使途の都合上、少額(768円)の未使用金額が生じてしまったため。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Intracellular Phage Tail-Like Nanostructures Affect Susceptibility of Streptomyces lividans to Osmotic Stress2023

    • 著者名/発表者名
      Nagakubo Toshiki、Asamizu Shumpei、Yamamoto Tatsuya、Kato Manami、Nishiyama Tatsuya、Toyofuku Masanori、Nomura Nobuhiko、Onaka Hiroyasu
    • 雑誌名

      mSphere

      巻: 8 ページ: e0011423

    • DOI

      10.1128/msphere.00114-23

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 宿主細胞のストレス応答に関連づけられたファージ尾部様粒子の発見とその生態学的意義の示唆2023

    • 著者名/発表者名
      永久保利紀 , 西山辰也 , 浅水俊平 , 山本達也 , 加藤愛美 , 野村暢彦 , 豊福雅典 , 尾仲宏康
    • 学会等名
      第36回日本微生物生態学会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi