研究課題/領域番号 |
23K13870
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高 相昊 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命助教 (50932927)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | メンブレンベシクル / 細胞外膜小胞 / 水素細菌 / バイオポリマー / ポリヒドロキシアルカン酸 / 細胞膜 / エンベロープストレス / グラム陰性細菌 |
研究実績の概要 |
これまで、申請者は、大腸菌細胞内でバイオポリマー (PHB) を合成・蓄積させると、細胞外に大量のメンブレンベシクル (MV) が分泌されるという現象を発見した。さらに、本現象の興味深いところは、グルコース外部添加量で調節可能なPHB蓄積率に応じてMV発生量を精密にコントロールできる点ある。その仕組みに立脚して、本現象をPIA-MVP (Polymer Intracellular Accumulation-triggered system for MV Production) と命名した。一方、なぜ、MVが発生するのか?そのメカニズムは、未解明なままである。
今年度は、PIA-MVPによって発生するMVの分泌機構に焦点を当てることにした。そこで、細胞質内で発現させた緑色蛍光タンパク質 (GFP) をMVの中に内包誘導する方法を確立し、その発生挙動を解析することにした。その結果、PHB合成量とMV発生量との間に見られる線形性の相関関係と相反して、グルコース濃度15 g/L以上の濃度域のみで強いGFP蛍光が見られた。一方、15 g/L以下では、GFP蛍光は検出されない。さらに、透過型電子顕微鏡からは、15 g/L以下は、大腸菌の外膜からなる単層のMV (single-layered MV, s-MV) が大多数を占めていたが、15 g/L以上を "臨界濃度" として、外膜と内膜の両方を含む単層のMV (multi-layered MV, m-MV) が発生していることが判明した。すなわち、グルコース量に応じてs-MVとm-MVが選択的に作り分けられることを意味する。従って、本MV発生原理は、量的制御にのみならず、単層/多層の形態制御に優れたMV生産プラットホームとしての有効性が示すことができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請研究は、MV発生現象に立脚してポリマー合成菌と非合成菌との生理学的差異を明らかにしようとするものである。今年度は、非合成菌の大腸菌に注力して、発生するMVの形態特徴 (single-layer/multi-layer) からその発生原理を明らかにすることができた成果 (論文発表・日本農芸化学会関西支部講演会での受賞など) から、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
二年目以降は、ポリマー天然合成菌である水素細菌 (Cupriavidus necator) に焦点を当て、研究を進める予定である。C. necatorでは、通常のPHB合成時にはMVが発生しない。したがって、まずは、C. necatorからMV発生が "ON" となる因子を探索するところから着手する。両菌の比較生化学に立脚して、E. coliとの細胞生理の違いを地道に整理していくことで、MVの工学的応用のためのデザイン化の方法論確立、全微生物に共通するMV発生駆動原理のメカニズム解明に繋げる。
|