研究実績の概要 |
木材のアルカリ酸素蒸解で得られる黒液を原料とした2-ピロン-4,6-ジカルボン酸 (PDC)の大量生産系の開発を目指して、本年度は黒液中に主要に含まれるバニリン (VN)、バニリン酸 (VA)、シリンガアルデヒド (SN)、シリンガ酸 (SA)からのPDC生産系の構築を行った。広域宿主ベクターpSEVA241に、Pseudomonas属細菌由来のVA O-デメチラーゼ遺伝子 (vanAB)、およびp-ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ遺伝子 (pobA)と、Sphingobium lignivorans SYK-6株由来のプロトカテク酸4,5-ジオキシゲナーゼ遺伝子 (ligAB)、CHMSデヒドロゲナーゼ遺伝子 (ligC)、3-O-メチルガリック酸3,4-ジオキシゲナーゼ遺伝子 (desZ)、VNデヒドロゲナーゼ遺伝子 (ligV)、SNデヒドロゲナーゼ遺伝子 (desV)、およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子 (bzaA)を高発現プロモーター制御下で導入することでPDC生産プラスミドを作製した。作製したプラスミドをPseudomonas putida PpY1100株に導入することでPDC生産株を得た。作出したPDC生産株を5 mMのVN, VA, SN, またはSAをそれぞれ含む培地で培養した結果、各化合物を95%以上のモル収率でPDCに変換できることが明らかとなった。以上のことから、黒液中の主要化合物であるVN, VA, SN, およびSAから高効率にPDCを生産する微生物株の開発に成功した。
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