研究課題/領域番号 |
23K13892
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
目黒 康洋 東北大学, 農学研究科, 助教 (10912157)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 天然有機化合物 / 全合成 / 抗原虫活性 |
研究実績の概要 |
本研究課題ではそれぞれ抗リーシュマニア及び抗トリパノソーマ活性を持つisatropolone類ならびにphytohabitol類の全合成研究を実施した。isatropolone類の合成については、調製を完了していたE環部分の反応条件を修正することで、安定かつ大量供給する合成ルートを確立した。続くD環部分の構築についてはアルキル化による増炭とアルドール縮合により目的とするDE環部が得られたものの低収率に止まった。本変換では増炭のため強塩基を用いた際にレトロマイケル反応が進行し、E環が開環してしまうことで低収率になった。そこで、現在はカルボン酸を導入してカルボニルα位の酸性度を低下させることで、比較的弱い塩基でのアルキル化や分子内アルキル化による温和な条件での増炭を検討している。phytohabitol類についてはまず、5-hexen-1-olを出発原料に用い、既知の手法により増炭してオキサゾリジノン誘導体を調製した。不斉補助基であるオキサゾリジノン部分を還元条件で除去した後、酸化してアルデヒド体を得た。アルデヒド体に対して、リチウム試薬による求核付加反応を試みたところ望まないFelkin-Anh型の生成物が優先したため、添加剤や基質の保護基の検討を実施したところ、立体選択性を逆転させ、所望のChelation型の生成物を優先して得ることに成功した。続いて保護基の調製を行った後、ジオール部分を酸化してラクトン部分を構築した。以上により、phytohabitol類の下部ユニットの炭素骨格と立体化学の構築を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Isatropolone類についてはアルケンのオゾン酸化でアルデヒドへと変換した後、アセチルアセトンによる増炭と環化によるE環部分の構築をワンポット化することで容易に調製する手法を確立した。E環部分を単工程かつ大量に供給することができたが、D環部分の構築では保護基の変更や別法によるアルキル化を試みているが収率良くD環を構築する反応条件を見いだせていない。phytohabitol類については、下部ユニットの合成に着手した。本スキームの鍵となる立体選択的な求核付加反応において、種々の条件検討を実施したところ、所望の立体化学を有する目的物を優先的に合成することに成功した。その後の保護基の調製やラクトン部分の構築も比較的収率良く反応が進行し、phytohabitol類の下部ユニットの骨格構築を完了することができ、計画通りに合成研究を進められている。
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今後の研究の推進方策 |
Isatropolone類のD環部分の構築の際に、強塩基を用いるとE環部分が開環する望まない副反応が進行してしまう問題が生じた。そこで現在の方針としてはE環のカルボニルα位にマンダー試薬などでエステルを導入することで、カルボニルα位の酸性度を低下させ、比較的弱い塩基を用いることでレトロマイケル反応によるD環部分の開環を防げると期待している。その他の別法として、E環に存在するヒドロキシ基をカーボネート基に変換して、分子内での求核付加反応により温和な条件で所望の増炭ができると予想している。phytohabitol類の下部ユニットの骨格構築が完了したので保護基を除去することで下部ユニットの合成を完了する予定である。続いて、phytohabitol類の中央ユニットと上部ユニットの合成に着手する。中央ユニットと上部ユニットの合成は既知化合物から単工程で調製可能であると考えているため、短期間で合成を完了する計画である。ユニットの連結工程では非共役ジエン部分の構築において、鍵となるニッケル触媒を用いたカップリング反応を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については他の助成金で支出できたので予算に余りが生じた。旅費については参加した学会やシンポジウムが申請者の所属大学で開催されるなどしたため、交通費・宿泊費の支出が計画より抑えられた。次年度も引き続き、実験器具や消耗品の購入に支出する予定であり、また学会の参加も増えるため、繰越額を旅費などに使用する。
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