研究課題
本研究では、ダイコンの花成ホルモン高発現能に関わるゲノム多型の同定・整理と、その集積による花成ホルモン高発現植物の新規作出を目的としている。本年度は①多様なダイコン遺伝資源110系統を用いた、花成ホルモンをコードするFT遺伝子とその主要な上流制御遺伝子に関する発現解析およびゲノム多型の取得、および②FT発現量に差があるダイコン系統間の交雑分離集団の栽培およびQTL解析を実施した。その主な成果は以下の通りである。①対象とした遺伝資源の中で、FT遺伝子の発現量には系統間で数十倍以上の遺伝的変異がみられた。ターゲットシーケンスにより各遺伝子のゲノム多型を取得し、ハプロタイプの整理と遺伝子発現量との関連解析を実施した。その結果、解析対象としたFTの上流遺伝子の中に、FT遺伝子の高発現との関連が示唆されるハプロタイプをもつものを見出したため、その効果検証のための交雑分離集団を作出した。また解析対象としたFTの上流遺伝子の発現量ではFTの発現量が説明できない系統についても、その原因遺伝子の同定のための交雑分離集団を作出した。②複数集団のQTL解析の結果、FT発現量と関連するQTLをいくつかの染色体領域に検出した。QTLの中で、上述の主要な上流制御遺伝子が座乗する領域外に存在したものがあったことから、これらについては花成ホルモン高発現に関わる新規のQTLとして特に注目し、効果検証と候補遺伝子の同定を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
既知遺伝子に着目した解析は計画通り進んでおり、その結果に基づく新規遺伝子の探索のための交雑分離集団の作出も行うことができた。また計画に先行して行ったQTL解析においてFT発現量と関連するQTLが検出され、交雑分離集団を用いた解析が可能であると確認できた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
計画通り、作出した交雑分離集団を用いて、FT発現量に関するQTLを実施する。また検出されたQTLに関しては、接ぎ木開花誘導能力への寄与の評価に向けて、バッククロスによる検定系統への導入を随時進めていく。
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