研究課題/領域番号 |
23K13965
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
小林 大介 国立感染症研究所, 安全実験管理部, 主任研究官 (40829850)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | マダニ媒介ウイルス / マダニ / ex vivo / 器官培養 / カブトマウンテンウイルス |
研究実績の概要 |
まず当初の計画通りに、野外採集マダニを用いたマダニ器官のex vivo培養法の確立を試みた。群馬県や富山県など国内各所においてマダニの採集を行い、キチマダニを含む数種のマダニ個体を採集した。これら野外で採集されたマダニの雌成虫を用いて、界面活性剤やエタノールなどにより虫体表面の洗浄と消毒を行い、最適な消毒条件を検討した。その後、洗浄・消毒したマダニ個体を解剖して中腸や唾液腺などを摘出し、ライボビッツL-15培地などをベースとした培養液中で培養を行い、細胞の生存率などを観察した。その結果、数週間にわたって、これらマダニ由来の器官を培養維持することに成功した。続いて、同様の方法によって培養維持した器官に、カブトマウンテンウイルス(KAMV)を接種し、経時的に培養上清のサンプリングを行った。培養上清中のウイルスRNA量の変化をリアルタイムPCRによって測定した結果、経時的なウイルスRNA量の増加が確認されたことから、マダニ器官のex vivo培養法とともにこれを用いたKAMVの感染実験法を確立した。 また、レポーター遺伝子を搭載した遺伝子組換えKAMVを作製するべく、ウイルスゲノムcDNAのクローニングを進めた。ウイルスのL分節に関しては、完全長cDNAのクローニングに成功した。その他の分節においても、現在、完全長cDNAのクローニングを試みている。 さらに、KAMVのNタンパク質およびNSsタンパク質に対する特異抗体を作製するため、大腸菌を用いたタンパク質発現系に用いる発現ベクターの作製と発現条件の検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な実験条件を検討することによって、当初の計画通りにマダニ器官のex vivo培養法を確立することができた。さらに、それを用いたウイルス感染実験系の確立にも成功したことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、完全長のウイルスゲノムcDNAのクローニングを行い、カブトマウンテンウイルスのリバースジェネティクス系の作製を行う。それをもとに、レポーター遺伝子を搭載した組換えウイルスの作製とex vivo感染実験系によるウイルス感染マダニ種の特定実験を計画している。さらに、マダニ器官におけるウイルスの局在などを解析するため、ウイルスタンパク質の大腸菌での発現と精製を引き続き行い、それを抗原として作製したウイルス特異抗体を用いた免疫組織化学的な解析を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
組換えウイルスを作製するためのリバースジェネティクス法を行う上で必要な申請の承認に時間を要したため、これらの実験への使用を予定していた試薬等の消耗品に関する費用を次年度へ繰り越すこととした。実験を遂行するために必要な申請は全て承認されたため、今後は当初の計画通りに、組換えウイルス作製のための実験を順次実施するとともに、そのために必要となる試薬等についても、繰り越した分を含め計画的に執行する予定である。
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