研究課題/領域番号 |
23K14010
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中山 直英 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (40781894)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 分類学 / 生物多様性 / 深海魚 / 水産顎 / 系統分類 |
研究実績の概要 |
本研究は,深海底を代表する魚類の一群であるソコダラ科のホカケダラ属Coryphaenoides Gunnerus, 1765を対象に,(1) 本属の亜属レベルの分類を再定義すること,(2) 種レベルの多様性を包括的にレビューすること,(3) 生息水深および形態形質の進化的な関連性を解明することを目指している. 研究機関3年の初年度となる令和5年度は,現所属に保管されている標本(とくに,グリーンランド産,ニュージーランド産,東南アジア産など)と,国内外の研究機関から借用した標本(とくに西太平洋産)について,外部形態の計測や体側鱗の形態観察を実施した.これらの検討と文献調査の結果,申請段階で未記載種の候補と想定していた複数種のうち南シナ海産の1種については,頭部の被鱗域,体側鱗の形態,鰭条数,および頭部の計測形質の組み合わせが既知種のいずれにも合致せず,明らかな未記載種と確認されたため,記載論文の投稿に向けた原稿執筆を行っている.また,これまで3大洋に広域分布すると考えられてきたダイコクヒゲCoryphaenoides rudis Gunther, 1878には2種が含まれる可能性が示唆された(南シナ海産標本の形態的特徴が,その他の海域のものに合致しない)ため,現在詳細な検討を進めている.一方,これまでの調査によって国内各地から得られ,現所属に保管されている本属の組織サンプルの内訳を把握・検討し,来年度以降の追加採集などの計画を立てている.なお,本年度は台湾の研究協力者が来日したため,研究計画の確認や来年度の実施内容の検討などについて,直接打ち合わせすることができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転職による所属機関の変更により,当初予定していなかった環境整備などに時間が割かれ,研究の開始時期が遅れてしまった.また,ライフイベントの影響で,当初予定していた学会参加,野外調査,他機関での標本調査などを次年度以降に見送った.ただし,手元にある研究資料の検討・解析は着実に進んでいるため,「おおむね順調に進展している」と判断した..
|
今後の研究の推進方策 |
アメリカ,フランス,オランダ,および東南アジアの研究機関を訪問し,学名の基準となるタイプ標本を含めた所蔵標本の現地調査を実施する(滞在先は標本の観察状況や現地研究者との調整によって変更する場合がある).一方,属内の系統解明やDNAバーコーディングなどの遺伝的分析に本格的に取り掛かる.執筆中の論文も含め,得られた成果を誌面・学会などで順次公表する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の変更により,申請時に想定していなかった機器や器具などを購入する必要があり,予算の前倒し申請を依頼した.しかし,年度後半に獲得できた別の研究資金で上記の購入費用の一部を賄えたため,次年度使用額が生じた.残額は,今後の海外調査費に充てる予定である(円安による旅費高騰への対応).
|