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2023 年度 実施状況報告書

農業経営における共通価値創造の基礎的条件:コアコンピタンスとガバナンスの役割

研究課題

研究課題/領域番号 23K14036
研究機関農林水産省農林水産政策研究所

研究代表者

吉田 真悟  農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (00848624)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード共通価値創造 / Creating Shared Value / コアコンピタンス / コーポレート・ガバナンス / デューデリジェンス
研究実績の概要

まず,農業経営の持続可能な活動が企業価値の創造に果たす役割を明らかにするため,農業法人に対する聞き取り調査を実施した結果をまとめた。その結果,法人が抱える経営課題の解決を目的とした持続可能な活動を行うことで,多様な経営資本の蓄積につながっていることが示された。さらに,こうした価値創造プロセスには経営者による人的ネットワークの活用や積極的な知識・スキルの習得が関連していた。
また,日本政策金融公庫および日本農業法人協会の協力により得られたデータを分析した結果,持続可能な活動は,ポストコロナ期の経済的ショックに対するレジリエンスを高め,さらに,多様な経営資本の改善を通じて売上の増加や利益率の向上に結び付くことを定量的に示した。都市農業を対象とした調査では,こうした持続可能な活動が農地の保全や後継者の確保にもつながっていた。農業法人の有機JAS認証の取得を対象とした研究によれば,認証のない有機農業を実施する法人よりも,認証を取得した法人の方が売上成長率や労働生産性が高いことが示された。
持続可能な活動の規定要因に関する研究では,コーポレート・ガバナンスによって従業員に対する活動が促進される一方で,地域や市民に対する活動が抑制されることが示された。この結果は,農業経営において,持続可能な活動を規定する要因は組織内の公式的な意思決定プロセス以外にもあることを示唆している。本テーマについては,2023年10月に日本農業法人協会とともに新たなアンケート調査を実施した。さらに,従業員のモチベーションやスキル,企業文化といったコアコンピタンスが持続可能な活動に与える影響を明らかにするため,アンケート調査にて農業法人の従業員に対する調査に関する追加調査の同意を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず,課題①「農業経営に対する財務及びビジネスのデューデリジェンスによるCSVの事業プロセスの評価」で予定していた事例調査を実施し,比較分析を完了している。課題②「CSVとその基礎となるコアコンピタンス(組織能力や組織文化)の相互的な影響関係の評価」に関しては,農業法人による持続可能な活動が経営のレジリエンスや成長性,効率性に与える影響をアンケート分析から明らかにした。さらに,2023年10月に実施した日本農業法人協会とのアンケート調査によって,従業員に対する追加調査の同意を200件以上の法人から得ることに成功した。課題③「農業経営のガバナンスがCSVの継続性に与える影響の評価」については,農業法人のコーポレート・ガバナンスと持続可能な活動との関係を明らかにするために,日本農業法人協会のアンケート調査結果を活用し,コーポレート・ガバナンスと活動の間にはシナジーやトレードオフがあることを示した。さらに,本テーマについては,2023年10月に日本農業法人協会とともに新たなアンケート調査を実施し,データを回収済みである。

今後の研究の推進方策

2024年度は,まず,課題①「農業経営に対する財務及びビジネスのデューデリジェンスによるCSVの事業プロセスの評価」について,成果をプレスリリースや書籍といった形での公表を予定している。課題②「CSVとその基礎となるコアコンピタンス(組織能力や組織文化)の相互的な影響関係の評価」については,農業法人の従業員に対するヒアリング調査を開始し,アンケート調査の設計および調整を行う。課題③「農業経営のガバナンスがCSVの継続性に与える影響の評価」については,すでにデータ分析が完了したものについては国際誌への投稿を予定している。さらに,2023年度に回収したアンケート調査結果の分析も行う。
2025年度は,課題②については,農業法人の従業員に対するアンケート調査を実施し,データ分析を行う。課題③については,データ分析の結果を国際誌に投稿する。
2026年度は,課題②について,データ分析の結果を国際誌に投稿する。また,課題①~③の結果をとりまとめた結果を社会に発信するためのセミナーやプレスリリースを検討する。

次年度使用額が生じた理由

2023年度に育休制度を3か月間利用したことによって研究が中断した。これにより,2023年度に実施を予定していたアンケート調査や論文投稿が2024年度以降にずれ込んだことにより,次年度使用額が生じた。
2024年度には2023年度に投稿した論文の掲載料の支払いや調査結果の一部をまとめた書籍の出版を予定している。これらへの支出により次年度使用額及び来年度の支給額の使用を予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Effects of Sustainability Practices on Farm Continuity in Urban Agriculture: From the Creating Shared Value Perspective2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshida Shingo、Yagi Hironori
    • 雑誌名

      Sustainability

      巻: 15 ページ: 15463~15463

    • DOI

      10.3390/su152115463

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 農業法人における有機JAS 認証を通じた価値創造プロセス2024

    • 著者名/発表者名
      吉田真悟・楠戸建・日田アトム
    • 学会等名
      2024年度日本農業経済学会大会

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公開日: 2024-12-25  

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