研究課題/領域番号 |
23K14104
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
西嶋 陽奈 国立感染症研究所, ウイルス第三部, 研究員 (90765140)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 発育鶏卵 / 漿尿膜 / 鶏TMPRSS2 / インフルエンザウイルス / 開裂活性化 |
研究実績の概要 |
季節性インフルエンザHAワクチンは、発育鶏卵の漿尿膜細胞に感染し、多段階的に増殖したウイルスを含む漿尿液を元に製造される。季節性インフルエンザウイルス(IFV)の多段階的な増殖には、宿主酵素による活性化が必須であり、生体内では呼吸器上皮細胞に発現するII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)がその役割を担うことが示されている。しかしながら、鶏卵内のIFV活性化には、血液凝固第X因子活性型(FXa)の関与以外の知見は乏しく、漿尿膜細胞におけるIFV活性化酵素の解析は十分ではない。 申請者は、漿尿膜細胞に鶏TMPRSS2(allTM2)mRNAが発現していることを見出しており、本研究では鶏卵内微小環境におけるallTM2のIFV活性化への関与について明らかにする。 今年度は、allTM2の配列情報の取得、漿尿膜細胞の候補酵素のデータベース化を目的とした。まず、鶏卵(10日胚)より漿尿膜を採取してmRNAを抽出し、allTM2のORF(1461nt)配列を決定した。allTM2のアミノ酸配列をヒトやマウスなどのTMPRSS2と比較したところ、活性部位にある基質結合部位と触媒残基は宿主種間でよく保存されていることがわかった。取得した配列を元にallTM2発現プラスミドを構築した。 次に、allTM2がIFV活性化の主たる酵素であるかを検討するため、RNA-seq解析を実施し、漿尿膜細胞における他の候補酵素のレパートリーを探索した。その結果、既報のFXa、申請者が確認したallTM2の他、数種類のトリプシン様セリンプロテアーゼの発現を新たに確認した。Uniprotを参照し、それら酵素の細胞内(外)局在を確認したところ、allTM2とは異なる細胞局在であった。酵素の発現局在の違いを利用することで、allTM2が主たるIFV活性化酵素かを判断する追加の実験系が構築できると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
allTM2のORF(1461nt)配列を決定し、配列情報の登録も完了した(accession No; LC744788.1)。また、漿尿膜細胞の候補酵素のデータベース化ができたことにより、初年度の目的が概ね達成できたことから、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
allTM2を含めたIFV活性化に関与が示唆される候補酵素について、細胞への発現系やウイルス感染実験系を用いて、IFVのHA開裂活性化を確認する。さらに、IFVのライフサイクルのどの時点でHA開裂活性化が起きるのかを確認できる実験系を構築することにより、allTM2のIFVの活性化の主たる酵素であるかを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが、令和6年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和5年度分についてはほぼ使用済みである。
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