研究課題/領域番号 |
23K14110
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
武藤 真長 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特任助教 (50868867)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 栄養膜細胞 / カニクイザル / 胎盤 / レンチウイルスベクター |
研究実績の概要 |
哺乳動物の胎盤は、栄養供給・ガス交換を介して妊娠の維持や胎児の発育を担う重要な役割を持つ。しかしながら胎盤の形成機構に関する研究はげっ歯類を使った研究が主であり、ヒトなどの霊長類を用いた知見はほとんどない。マウスを使った先行研究より、受精卵から発生が進んだ胚盤胞期胚では外側の栄養外胚葉層(Trophectoderm, TE)が胎盤に限局して分化することがわかっている。また、内側にある内部細胞塊(ICM)は、胎仔の全ての細胞に貢献するエピブラスト細胞となり、胎盤系列には貢献しない。一方ヒトを含めた霊長類においてはマウスとは異なる新しい発生機構の存在が示唆されているが、生体レベルでの検証はされていない。我々は非ヒト霊長類であるカニクイザルを用いて、胚盤胞におけるICMの分化ポテンシャルを検証することを目的とした。 我々はレンチウイルスベクターを用いてTE特異的にRFPを発現させた胚盤胞からTS細胞樹立を試みた。標識された胚盤胞からoutgrowthコロニーが形成されるが、増殖したほとんどの細胞でRFPは陰性であった。さらにoutgrowthコロニーを継代して樹立されたTS細胞ではRFP陽性細胞は全く増殖していなかった。 また、興味深いことにレンチウイルスベクターによりTE層をRFPで標識した胚盤胞を共焦点顕微鏡で観察したところ、ICMに接するPolar TE層のRFP陽性率が、ICMに接していないMural TEに比べて有意に低いというデータが得られた。光シート顕微鏡を用いたライブイメージングにより、サル胚盤胞におけるICMの一部の細胞がTE層へ移動する現象を確認できた。レンチウイルスベクターによりTE部分を標識した胚盤胞を仮親サルに移植し、胎仔と胎盤を得ることができた。現在これらのサンプルの解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたサル胚のライブイメージングを行い、データを得ることができた。また細胞標識した胚の移植実験まで行い、サンプルを得ることができた。これらのサンプルからサル胚盤胞におけるICMの分化ポテンシャルを生体レベルで検証することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
サル胚盤胞のライブイメージングのデータから、ICMの細胞動態を観察することができたが、胚のどの位置に存在する細胞がどの割合で移動しているのかなど、より詳細な定量データの取得を進めていく。また細胞標識した胚の移植実験から得られた胎盤サンプルを用いて組織学的解析による標識細胞の局在解析だけでなく、胎盤組織のシングルセルRNAシークエンス解析を行い、どの細胞種がどの割合でトランスジーンを有しているか解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で行った細胞標識した胚盤胞の移植実験から、当初想定しているよりも多数の胚および胎盤を取得することができたため、その分のシングルセルRNAシークエンス解析を行うための予算確保が理由である。
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