研究課題/領域番号 |
23K14117
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
三浦 健人 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (70802742)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | T細胞 / TCR / クローンマウス / シングルセル / dual TCR T細胞 / TCRレパトア解析 |
研究実績の概要 |
本研究はdual TCR T細胞の生物学的役割と疾患との関連性を解明することを目的としている。dual TCR T細胞は2種類のT細胞受容体 (TCR) を同時に発現する特殊な細胞であり、これが自己免疫疾患等の疾患の発症原因となる可能性が指摘されている。しかし、生体内での出現頻度が低く、その機能を解析するのが困難であったため、その生物学的意義や疾患関連性の解明は遅れてる。本年度は全身で単一のTCRを発現するT細胞クローンマウスを用いて、dual TCR T細胞の機能を効率的に解析するための実験モデルの確立を行った。これまでのbulkでのTCRレパトア解析の結果から、卵白抗原に対して応答性を持つT細胞クローンマウスおよびそのT細胞に対してダニ抗原で感作・刺激培養を行うことで、dual TCR T細胞が高頻度で出現することが示唆されていたが、実際にシングルセルレベルでdual TCR T細胞の出現確認はされていなかった。そこでダニ抗原での感作・刺激培養を行った卵白抗原応答性T細胞クローンマウス由来のT細胞を用いてシングルセル解析を実施した。その結果、対照群と比較して、感作・刺激培養を行ったクローンマウスのT細胞には2種類のTCRを同時に発現するdual TCR T細胞が多く含まれることが明らかとなった。この結果は、T細胞クローンマウスを用いて「dual TCR T細胞の機能を効率的に解析するための実験モデル」を確立する本研究の目的達成を大きく後押しするものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究はdual TCR T細胞の生物学的役割と疾患との関連性を解明することを目的としている。本年度は全身で単一のTCRを発現するT細胞クローンマウスを用いて、dual TCR T細胞の機能を効率的に解析するための実験モデルの確立を行った。これまでのbulkのTCRレパトア解析の結果から、「ある抗原に特異的に反応する再構成済みTCRアレル」と「再構成前 (野生型) TCRアレル」を持ったT細胞クローンマウスとそのT細胞に対して、反応性を持たない別の抗原で感作・刺激培養を行うことでdual TCR T細胞の出現頻度が増加することが示唆されていた。しかしながら、bulkでの解析ではdual TCR T細胞の出現を直接的に証明することはできなかった。本年度は別抗原で感作・刺激培養を行ったT細胞クローンマウスのT細胞を用いてシングルセル解析を行うことで、dual TCR T細胞の出現頻度の増加を直接的に証明し、T細胞クローンマウスを用いてdual TCR T細胞を効率的に解析できる実験系が作出できることを示した。本年度の成果は、本研究が目的とするは「dual TCR T細胞の生物学的役割と疾患との関連性を解明」を大きく後押しするものであり、本年度のシングルセルデータをより詳細に解析することで、dual TCR T細胞の出現機構の解明にもつながりうるものである。以上より、本年度の進捗状況は非常に順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は「ある抗原に特異的に反応する再構成済みTCRアレル」と「再構成前 (野生型) TCRアレル」を持ったT細胞クローンマウスとそのT細胞に対して、反応性を持たない別の抗原で感作・刺激培養を行うことでdual TCR T細胞が高頻度で出現することを、シングルセル解析により示した。次年度以降は、本年度のシングルセルでのTCRレパトア解析およびRNA-seq解析を詳細に行い、dual TCR T細胞の出現に関与する遺伝子の解明を進める。特にTCR再構成関連遺伝子の発現変動に注目し、解析で変動が見られた遺伝子を標的としてゲノム編集等の技術を用いて発現制御を行い、dual TCR T細胞の出現頻度の変化を明らかにすることを試みる。以上の知見を基に「dual TCR T細胞を効率的に作出可能な実験系の樹立」を試み、「T細胞に由来するクローンマウス作出条件の最適化」と合わせて「dual TCR T細胞に由来するクローンマウス (dual TCRマウス) 作出」を目指す。dual TCR マウス作出後は、「dual TCRマウスが有するdual TCR T細胞のTCRレパトアや遺伝子発現変動の解明」を行う。またdual TCRマウスの各臓器に2種類の抗原を単独あるいは同時に暴露し、血中抗体濃度の測定、臓器の炎症反応や炎症細胞浸潤の評価、臓器付属リンパ組織へのT 細胞浸潤や炎症サイトカイン産生を評価し抗原応答性や炎症反応を明らかにすることで「dual TCRマウスの疾患モデルとしての有用性を評価」を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入予定だった実験用試薬・消耗品に関しては、他の研究計画で行った実験と兼用することが可能であったため、本年度中の購入を見送った。そのため、研究計画に支障は生じなかったものの、物品費の支出額が所要額を下回った。 次年度は、今年度実施したシングルセルシークエンスのTCRレパトア解析およびRNA-seq解析を詳細に実施し、dual TCR T細胞の出現に関与する遺伝子の解明を目指す。特に、TCR再構成関連遺伝子の発現変動に着目し、変動が見られた遺伝子を標的としてゲノム編集技術を用いた発現制御を行い、dual TCR T細胞の出現頻度の変化を明らかにすることを試みる。 加えて、「T細胞クローマウス作出条件の最適化(dual TCR T細胞を効率的に作出可能な実験系の樹立、T細胞由来のクローンマウスの作出条件を最適化、dual TCR T細胞に由来するクローンマウス [dual TCRマウス])の作出」、「TCRレパトアと遺伝子発現解析(dual TCRマウスが有するdual TCR T細胞のTCRレパトアや遺伝子発現変動を詳細に解析)」、「疾患モデルとしての評価(dual TCRマウスの各臓器において単独あるいは同時に抗原を暴露し、dual TCRマウスの疾患モデルとしての有用性を評価)」。も目指す。 次年度使用額はこれらの経費に充てることで、当初の研究計画以上の進展を見込む。
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