研究課題/領域番号 |
23K14149
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
小松谷 啓介 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術支援センター, 研究員 (30795620)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | コンドロイチン硫酸 / 神経細胞接着分子 / GPIアンカー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、神経細胞接着分子Contactin-6/NB-3が小脳シナプス形成にどのように関与するかを明らかにすることである。NB-3は平行線維とプルキンエ細胞間のシナプス形成に必須で、NB-3の遺伝子変異は自閉症スペクトラム障害や統合失調症を引き起こす。しかし、その分子メカニズムは未だに明らかになっていない。本研究では、NB-3が細胞外リガンドと結合することで、シナプス形成に関わるシグナルを伝達すると考え、新規リガンドの探索とシナプス形成に関わるシグナル分子の探索を行った。 小脳顆粒細胞の初代培養にNB-3モノクローナル抗体を用いたcross-link刺激実験により、シグナル伝達因子(PDK1、Akt、mTOR、S6K)を同定した。さらに、先行研究で見出したNB-3と強く結合するコンドロイチン硫酸E(CS-E)により、小脳顆粒細胞を刺激するとcross-link刺激実験と同様のシグナル伝達因子のリン酸化が検出された。この結果から、CS-EはNB-3のリガンドとして機能し、細胞内にシグナルを伝達することが示唆された。 NB-3はGPIアンカータンパク質のため、細胞内にシグナルを伝達する際に結合パートナーが必要である。NB-3の結合パートナーの探索も行った。そこで着目したタンパク質がContactin-associated protein (Caspr) familyであり、Caspr1、Caspr2、Caspr3、Caspr4、Caspr5にFc tagを融合しHek293Tに発現させ、それぞれのタンパク質を精製した。これらタンパク質の中で発現・精製できたCaspr2、Caspr5とNB-3の相互作用をBiacoreにて解析した。結果、Caspr2と強い相互作用が確認できた。この結果からCaspr2がNB-3の結合パートナーである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小脳顆粒細胞初代培養を用いた実験により、CS-E刺激によるシグナル伝達因子のリン酸化がNB-3モノクローナル抗体cross-link刺激と同様の結果が得られたことから、CS-Eによるシグナル伝達経路の解明ができた。さらに、NB-3の結合パートナーの候補も見出すことができたため、NB-3が介在するシグナル伝達の探索を目指した研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
さらなるNB-3の結合パートナーの解析のため残りのCaspr familyタンパク質の発現・精製を行っており、続いてBiacoreにて相互作用の解析を行う予定である。 小脳顆粒細胞を用いた細胞培養系でCS-Eのシグナル伝達の解析を行ったが、小脳の平行繊維とプルキンエ細胞間のシナプス形成は細胞培養系で評価することが困難ため、小脳の構造を保ったまま培養可能な小脳スライス培養を用いて、CS-Eまたはそのシグナル伝達因子がシナプス形成に関与することを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
シグナル伝達因子の解明ができたことで予定していた初代培養の実験系が不要となったため次年度使用額が生じた。未使用額は次年度スライス培養の実験系で使用する阻害剤や抗体等、またタンパク質精製に関わる消耗品や試薬が必要となるため、その費用に充てる。
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