研究実績の概要 |
多くの膜タンパク質は膜型プロテアーゼによって切断され、その細胞外ドメインを遊離する。この現象は、エクトドメインシェディング (シェディング) と呼ばれる。我々の以前の研究において、細胞が機能や環境に応じて必要な膜タンパク質のみをシェディング基質として選択する機構が存在することが示唆された (Tsumagari et al., 2021 iScience)。この分子メカニズムを解明するために、4種類の細胞株 (HeLa、A549、U251-MG、SHSY5Y) について、5種類のシェディング活性化試薬 (ホルボールエステル, イオノマイシン, アニソマイシン、リポポリサッカライド、リゾフォスファチジン酸) およびメタロプロテアーゼ阻害剤を処理し、培養上清に遊離されるシェディング基質をプロテオミクスによって定量的に解析した。その結果、全372の膜タンパク質がシェディング基質として同定された。これらのうち、187、42、1、53タンパク質が上記の細胞株についてそれぞれユニークなシェディング基質として確認された。また、例えば、HeLa細胞においては、63、9、21、241、19がそれぞれのシェディング活性化剤処理下でシェディング基質として同定された。ホルボールエステル処理依存的なシェディング基質として、63、75、5、63のタンパク質がそれぞれの細胞株で同定された。現在、これらの細胞株について、それぞれのシェディング活性化剤で活性化するリン酸化部位・シグナル伝達について解明するために、試料調製および測定を順次行っている。
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