研究実績の概要 |
魚類や両生類など脊椎動物の一群は、我々哺乳類には見られない高い器官再生能を有する。これらの生物モデルを用いて再生のメカニズムの理解を目指す研究は多く行われているが、一方、再生が阻害される要因に注目した研究は研究方法上の制約もありほとんど行われていない。本研究では器官再生能を阻害する1つの要因である「老化」に注目し、老化により再生能が低下することが報告されているアフリカメダカの尾びれ再生をモデルとして、細胞老化・細胞増殖能低下・免疫老化の観点から老化が再生を阻害するメカニズムを明らかにすることを目指す。 2023年度は組織学的な解析を中心に行い、アフリカメダカが老化により再生能が低下しているかどうかの再評価を行った。まず、2.5, 5, 7ヶ月齢の個体を用いて尾びれを切断し、その後の再生過程を経時的に追跡した。2.5ヶ月齢ではおよそ2週間で切断部位の再生は概ね完了しているのに対し、5, 7ヶ月齢の個体では切断後28日においても平均して6, 7割程度の再生率であり、老化による再生能の低下が示唆された。また、老化細胞を可視化するSA-β-gal染色を実施し、尾びれにおいて未切断時に老化細胞の蓄積は加齢に伴い進行はしないものの、尾びれ切断時には若齢個体、老化個体共に切断部位への老化細胞の蓄積が観察されることを確認している。次年度はこれらの定量解析を行う他、介入実験を行い老化細胞の除去が再生に及ぼす影響を評価する。 次年度以降の解析で用いるため遺伝子改変アフリカメダカの樹立を目指して実験を実施したが、未だ系統の樹立には至っていない。原因として一細胞期の受精卵の数を十分に確保できなかったこと、ゲノム情報が十分に整備されていないアフリカメダカのプロモーター部位をコンストラクト作製に利用したが、個体内でこの領域の活性化が生じていない可能性が考えられる。
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