研究課題
本研究では、植物の体軸形成の起点である受精卵の不等分裂を制御する新規因子を同定し、その機能を解明することを目的とした。1年目は、不等分裂の表現型にゆらぎが大きいwrky2単一欠損株の胚を単離し、単一胚レベルでのRNA-seq解析を実施することを目指した。従来用いていた細胞単離法では若い時期の受精卵の回収が困難であったため、方法の改良が必要となった。胚珠の酵素処理条件などを検討したが、受精卵を単独で胚珠から取り出すことはできなかった。そこで、受精卵を単独で取り出す代わりに、受精卵の周辺を含めた胚珠の一部分を手動でトリミングすることによって回収できることを見出したので、現在その方法を用いて受精卵を回収し、RNA-seqライブラリーの作成を進めている。また、並行して進めていたwrky2 hdg11/12三重変異株のRNA-seqデータから発現量が低下する遺伝子を選抜して、その欠損株の表現型を観察した。その結果、シトクロムp450をコードする遺伝子の変異株などで受精卵の不等分裂が損なわれた。次年度移行、これらの変異株に微小管マーカーなどを導入してライブイメージングすることで、不等分裂が損なわれる原因を探る。また、特定の分泌型ペプチドをコードするファミリーの中で、特異的にある単一の遺伝子のみが受精後に高発現することも見出した。この遺伝子についてはストックセンターに変異株が存在しないので、CRISPR-Cas9によるゲノム編集を用いて欠損株を作出する準備を進めている。
3: やや遅れている
本年度中にwrky2変異株のRNA-seqデータを取得する計画であったが、若い時期の受精卵の単離が難航したため、RNA-seq解析は実施できなかった。しかしながら、すでに周辺組織も残した状態であれば受精卵を回収できることを見出したので、細胞を十分な数回収でき次第、RNA-seq解析に供与する。
wrky2変異株のRNA-seqデータが得られれば、表現型の強さと遺伝子発現を対応させ、細胞の長さや核の位置に連動して発現変動する遺伝子を探索する。それらの遺伝子の変異株を観察することで、不等分裂に寄与する遺伝子を同定する。
本年度中にRNA-seq解析を実施しなかったため、その解析受託比を次年度に繰り越して使用する。
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Scientific Reports
巻: 13 ページ: 22879
10.1038/s41598-023-50020-8
Life Science Alliance
巻: 6 ページ: e202201657
10.26508/lsa.202201657