研究課題/領域番号 |
23K14217
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
森中 初音 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40908349)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 細胞リプログラミング / シュート再生 / シングルセル解析 / 分化多能性 |
研究実績の概要 |
2023年度は、トレニア茎断片培養系において、培養開始後早いステージでのシングルセルトランスクリプトームデータを取得し、それをもとに表皮細胞をはじめとする分化細胞の細胞運命がリプログラミングされる際の遺伝子発現プロファイルの解析を行なった。 その結果、トレニア茎断片培養系においては、培養に応答して出現する新しい種類の細胞集団において、リボソーム生合成関連遺伝子の発現が特に活発であることが明らかになった。 培養に応答して出現する新しい種類の細胞集団のうち1種類は、リプログラミング過程にある表皮細胞との対応が伺われた。この細胞集団に特異的な発現を示す遺伝子のうち、これまでは根毛形成の制御因子として知られていた因子についてシロイヌナズナの変異体の表現型解析を行なったところ、この因子が傷害に応答したカルス形成と分化細胞からのカルス形成を正に制御していることが示唆された。 今年度は、国際的な交流や成果発信にも努めた。ニューヨーク大学に短期留学し、シングルセルマルチオミクス解析に必要な細胞核単離技術とwhole mount HCR RNA FISHを用いた遺伝子の空間的発現パターンのイメージング技術を習得した。それだけでなく、研究成果を2つの国際学会で発表し広く発信した。さらに、日本植物学会第87回大会では、オーガナイザーとして国際シンポジウムを開催し、国内外から研究者を招聘し、自らも研究発表を行なった。また、分化細胞からのリプログラミングに関して、最新の知見を紹介する総説をCurrent Opinion in Plant Biology誌に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シングルセルトランスクリプトーム技術により、分化細胞のリプログラミング過程に特異的な遺伝子発現プロファイルの解析を進めることができた。 これらの解析で特定した遺伝子のうちいくつかについてシロイヌナズナでの機能解析を行い、これまで再生・細胞運命リプログラミングという文脈では注目されてこなかった遺伝子について、再生における役割をもつことを明らかにすることができた。 さらに、意欲的に国際的な交流を行い、研究成果を広く発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
シングルセルトランスクリプトームデータから単離されたシュート再生制御の候補因子についてHCR RNA FISH解析による空間的発現パターン解析を行う。さらに、トレニアを形質転換して機能操作株を作成し、トレニアのシュート再生における機能解析を進める。それと並行して、シロイヌナズナでも機能操作株を用いた解析を進める。 再生での機能が明らかになった転写因子について、ChIP解析から下流の因子を特定する。 これらの研究成果をまとめ、学術誌で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シングルセル解析について、当初予定していたよりも少ないタイムポイントの解析から十分な精度のデータを得ることができた。 今年度はこれまでに単離した遺伝子についてChIP解析や変異体のトランスクリプトーム解析を行う。さらにこれまでの成果を論文にまとめ、学術誌に投稿する。
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