研究課題/領域番号 |
23K14268
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
石澤 秀紘 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (90888265)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 植物―微生物共生 / 代謝 / 種間相互作用 / 遺伝子発現 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、無菌化した植物に少数の細菌株を接種して作成したシンプルなモデル生態系を活用することで、植物共生細菌群集の成立機構を明らかにすることを目的としている。特に、異なる細菌同士が互いの資源獲得戦略を調節し、直接的な競争を下げる「食い分け」という現象に着目し、その分子メカニズムの解明に取り組むことを計画している。本年度は、予定通りモデル生態系の構成種について、これまでの研究で特定した重要な代謝遺伝子の破壊株を構築することに取り組んだ。その結果、1株について相同組み換えによる遺伝子破壊法を確立することができた。また、この方法に基づいて着目する代謝遺伝子の破壊株を構築し、その宿主植物への定着能力を野生株との比較において評価する実験を行った。結果として、当該代謝遺伝子の破壊により、植物重量あたりの定着量が約1/3に低下することをが明らかとなった。更に、構築した破壊株の炭素源資化能力を評価したところ、糖類を始めとする一部の炭素源の資化性が野生株より低下することを確認した。これらの結果から、当該遺伝子は、宿主植物が分泌する炭素源の利用に関わり、それにより共生関係の成立に重要な役割を果たすことが確認できた。以上のように、着目した代謝遺伝子について計画通りの実験を実施し、概ね仮説を支持する研究データを積み重ねることができた。また、当該遺伝子のプロモーター領域の同定とクローニングを行い、レポーターアッセイによってその発現制御機構の評価を行う準備を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子破壊法の確立に想定以上の検討を要し、構築できた遺伝子破壊株の数は当初の計画を下回るものだった。一方、構築した遺伝子破壊株を用いた検討および発現制御機構に関する検討を前倒しで進めることができたことから、おおむね順調に進展しているものと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
着目している代謝遺伝子のプロモーターと蛍光遺伝子を接続し、これをレポーターに用いたアッセイにより、遺伝子発現制御機構を明らかにする。また、構築した破壊株について実際の植物分泌物を用いた炭素源資化能の評価を行い、その役割の理解を試みる。
|