研究実績の概要 |
本研究では、「眼窩下神経切断後の視床VPm核の再改編は、視床VPm核の皮質視床シナプスの制御によって阻止することができる」という仮説を検証することを目的とする。以前の研究では、成体マウスにおいて眼窩下神経を切断すると、一週間後に視床VPm核の神経回路が改変することが明らかにされた (Takeuchi et al., The Journal of neuroscience, 2012)。また、皮質視床シナプスのシナプス後部に豊富に存在する代謝型グルタミン酸受容体mGluR1が視床VPm核の内側毛帯線維シナプスを維持する働きを有することも明らかになっており (Narushima et al., Plos One, 2019)、皮質視床シナプスが視床VPm核における感覚線維由来シナプスの維持に寄与していることが示された。令和5年度は、眼窩下神経を切断した成体マウスの視床VPm核を組織学的に観察した。視床VPm核のmGluR1の発現は、眼窩下神経切断による影響はうけなかった。しかし、眼窩下神経切断は、特定のmGluR1シグナル伝達経路の下流分子の発現には影響を及ぼした。次に、視床VPm核にフィードバック投射する皮質視床ニューロンを含む一次体性感覚皮質を組織学的に観察したところ、眼窩下神経切断によって神経活動のマーカーであるc-fosの発現が一次体性感覚皮質全体にわたって影響を受けた。令和5年度後半から現在にかけて、成体マウスの一次体性感覚野にウイルスによってDREADDシステムを発現させたマウスを使用し、眼窩下神経切断後に皮質視床シナプスを制御した際の視床VPm核への感覚線維の支配様式を電気生理学的に検討している。
|