哺乳動物が野生環境で行う冬眠は年に1回しか観察できない現象であり,冬眠・休眠様の低代謝を研究するには長い年月を要する.代表は脳の特定領域に存在するグリア細胞がマウスの全身代謝を低下させ,休眠様状態へと誘導する可能性を見出した.本研究では,グリア細胞を切り口とすることで代謝状態を制御する新たな中枢メカニズムを明らかにすることを目指す. グリア誘導性低代謝状態のマウスの生理状態変化を解析したところ,体温を含めたいくつかの自律神経機能の抑制が認められた.興味深いことに,このときのマウスは意識消失しているわけではなく,たとえば捕まえようとして手を近づけると,通常のマウスと同様に実験者の手から逃避する行動を示す.また,麻酔時のように室温程度まで体温が低下することはないことから,体温や代謝を保持する仕組みの一部の経路のみが影響を受けた結果であると想定される.この仕組みを明らかにするため,アンタゴニストを用いた薬理学的な解析を実施したところ,グリア誘導性低代謝に関わる重要な受容体(候補)を発見した.
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