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2023 年度 実施状況報告書

虚血を契機に引き起こされるペリサイト幹細胞化の分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K14308
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

佐久間 理香  兵庫医科大学, 医学部, 助教 (90780180)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードペリサイト / pNrf2 / Protein Kinase C / 幹細胞化 / 脳梗塞
研究実績の概要

iPCsに発現しているNrf2がリン酸化されているものであるかどうかを、抗pNrf2抗体及びpNrf2と交差しない抗Nrf2抗体を用いて検討した。正常脳ペリサイトよりもiPCsにおいて、pNrf2が核内に高発現している様子が見られた。また、Nrf2はiPCsにおいて、小胞体と思しき領域に強く発現していることが分かった。Western blottingの検討においても、pNrf2がiPCsにのみ発現していることが判明した。このpNrf2がProten Kinase Cによってリン酸化修飾を受けたものであるかどうかを、広域のPKC阻害剤(Gouml 6983)を1-50マイクロMの濃度を振って添加し、幹細胞マーカーの発現について検討したところ、50マイクロMの濃度においてiPCsのpNrf2のバンドが減少することが分かった。
そこで、iPCsに発現しているPKC isoformについてRT-PCRにて解析したところ、先にマイクロアレイ解析で判明していたPKCβだけでなくPKCδについても発現していることが判明した。そこで、PKCβ阻害剤(LY-333531)及びPKCδ阻害剤(Rottlerin)をiPCsに濃度を振って添加したところ、PKCδ阻害剤を5マイクロM添加した条件においてのみpNrf2のバンドが減少した。免疫染色においても、PKCδ阻害剤添加によりpNrf2の核内の発現が減少しており、Nrf2の発現が強くなっていることが判明した。また、nestin、Sox2といったiPCsに発現している幹細胞マーカーが減少していた。このことから、iPCsに発現しているNrf2はPKCδによるリン酸化修飾を受けており、幹細胞マーカーを調節していることが考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

iPCsで発現しているNrf2はPKCによってリン酸化されていることが判明し、仮説通りの結果を得られたが、iPCsにおいてPKCβだけではなくPKCδについても発現していたことが判明した。PKCβにはカルシウムイオン結合領域があるが、PKCδには存在していない。正常脳ペリサイトにカルシウムイオンイオノフォア、iPCsにカルシウムイオン阻害剤を添加してもnestinなどの幹細胞マーカーに変化がみられなかった。このことからもPKCβによる調節を受けていないことを裏付けていた。いずれにしても、iPCsに発現しているリン酸化Nrf2はPKCによる修飾であったという仮説は正しく、PKCδ阻害剤によってiPCsの幹細胞マーカーが減少している結果を得たことから、計画は概ね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

脳梗塞モデルマウスにDMSO、PKCβ及びPKCδ阻害剤を腹腔内注射して梗塞巣内に現れるiPCsに変化がみられるかどうかを検討する。この動物実験計画書は既に「兵庫医科大学動物実験規程」に基づき動物実験委員会の承認を得ており(#23-100A)、現在研究を遂行している。PKCδ活性化剤については情報が乏しいが、PMA(12-O-Tetradecanoylphorbol 13-acetate)というPKC活性化剤が活性酸素に応答してPKCδを活性化させる報告がある。そこで、PMAを正常脳ペリサイトに添加し、幹細胞マーカーに変化がみられるのかどうかを検討する。
もし、PMAの投与で梗塞領域の変化がみられないようであれば、薬剤スクリーニングによるPKCδ活性化剤の選定を行い、正常脳ペリサイトに添加し幹細胞マーカーに変化が現れるのかどうかを検討する。そして、治療薬候補を脳梗塞モデルマウスに投与することで、脳梗塞後の症状が改善されるかどうかを各種行動試験(Open field test、ロータロッド試験など)により総合的に評価し、ペリサイト幹細胞化を利用した新規治療法の臨床応用を目指す。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] 脳ペリサイトはPKCによるNrf2リン酸化を介して幹細胞化する2024

    • 著者名/発表者名
      佐久間理香、湊雄介、前田誠司、八木秀司
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] 抗酸化因子Nrf2のリン酸化によって誘導される脳ペリサイトのリプログラミング現象2023

    • 著者名/発表者名
      佐久間理香、湊雄介、前田誠司、八木秀司
    • 学会等名
      ORIGIN 神経科学研究会2023
  • [学会発表] Induction of Nrf2 converted brain pericytes to neural stem cells2023

    • 著者名/発表者名
      Rika Sakuma, Yusuke Minato, Seishi Maeda, and Hideshi Yagi
    • 学会等名
      Neuroscience 2023
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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