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2023 年度 実施状況報告書

高歪みかご型炭化水素の医薬化学的利用価値を拡張するための有機化学的方法論の開拓

研究課題

研究課題/領域番号 23K14315
研究機関東北大学

研究代表者

長澤 翔太  東北大学, 薬学研究科, 助教 (50846425)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワードかご型炭化水素 / 生物学的等価体
研究実績の概要

高歪みかご型炭化水素のユニークな反応性,分子特性の理解を基盤として,その医薬化学的利用価値を拡張するための有機化学的方法論を開拓するために以下に示す2つの具体的方策を検討した.
「キュバン C-H 結合をラジカル的に切断し,様々なラジカルアクセプターと反応させるための一般的手法を開拓する」検討においては,種々検討の結果,タングステン酸光触媒を用いることで,触媒的なラジカル的キュバンC-H結合の切断が進行し,ラジカル受容体とのカップリングが進行することを見出した (Org. Lett. 2024, 26, 658).この結果は,ベンゼン環の生物学的等価体として知られるキュバンを精密に修飾するための新規な手法であり,この反応を用いた種々の医薬品アナログ等の合成における基盤技術となりうる.
「1,3-置換クネアンを,その構造的類似性と分子の剛直性に鑑み,メタ置換ベンゼンの生物学的等価体として提案する」検討においては,キュバン上の置換基が異性化に与える影響を精査することで,高選択的に1,3-置換クネアンを得る手法を見出した.この1,3-置換クネアンを原料とし,メタ置換ベンゼンを有する抗炎症薬であるケトプロフェンのクネアンアナログを合成することで,その生物活性の比較に成功した.さらに得られた生物活性の結果についてインシリコ解析を行うことでその解釈も行った(Chem. Eur. J. 2024, 30, e202303548).本研究の遂行過程で,2つの異なる研究グループより類似の内容の論文が報告され,また得られたアナログは「生物学的に等価」と言えるほどの活性を保持していなかったものの,申請者らはクネアン骨格を有する化合物の生物活性評価に世界で初めて成功した.本成果は,医薬分子設計の新たな指針を示唆するものであり、創薬科学研究の進展への寄与が期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

開始1年足らずで,それぞれの検討事項の概念実証と言える検討を終え,論文化を達成した.このことは申請者の想定以上の速度で検討が進んでいることを意味する.一方でこの論文化は,競合論文が報告されたため急遽行った側面が否めないため,申請者の求めるより包括的かつ網羅的なレベルでの報告には満たない.よって「当初の計画以上」とはいえないことから本評価とした.

今後の研究の推進方策

一年目で得た基盤技術をより発展させる方向で検討を行う.
「キュバン C-H 結合をラジカル的に切断し,様々なラジカルアクセプターと反応させるための一般的手法を開拓する」検討においては,異なるラジカル受容体を連結させる手法の開拓および位置選択的なラジカル官能基化を行う方法論の開発を行う.開発した手法を多置換キュバンを合成するための包括的方法論として体系化し,これを用いて多置換ベンゼン構造を有する医薬品のキュバンアナログの合成・活性評価を行い,キュバンを生物学的等価体として用いる創薬研究の基盤となる情報を集める.
「1,3-置換クネアンを,その構造的類似性と分子の剛直性に鑑み,メタ置換ベンゼンの生物学的等価体として提案する」検討については,より多様なアナログの合成と生物活性評価を行うとともに、不斉異性化反応も検討し,クネアンのキラリティーが生物活性に与える影響について精査する.

次年度使用額が生じた理由

購入先の事情により,2023年度内に購入予定であったキュバン原料の購入を見送ったため,物品費に大きな余剰が生じた.また,申請者の研究費にて学会出張予定であった学生が別途研究費を受領できることになったため,旅費に僅かに余剰が生じた.
2024年度は,年度はじめに見送ったキュバン原料を購入する.そのほかは,当初計画に従い予算執行を行うつもりである.

備考

発表論文"Biological Evaluation of Isosteric Applicability of 1,3-Substituted Cuneanes as m-Substituted Benzenes Enabled by Selective Isomerization of 1,4-Substituted Cubanes"に関するプレスリリースである.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] C-H Alkylation of Cubanes via Catalytic Generation of Cubyl Radicals2024

    • 著者名/発表者名
      Masaki Hosaka, Shota Nagasawa, Yoshiharu Iwabuchi
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 26 ページ: 658-663

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.3c04019

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Biological Evaluation of Isosteric Applicability of 1,3-Substituted Cuneanes as m-Substituted Benzenes Enabled by Selective Isomerization of 1,4-Substituted Cubanes2024

    • 著者名/発表者名
      Kan Fujiwara, Shota Nagasawa, Ryusei Maeyama, Ryosuke Segawa, Noriyasu Hirasawa, Takatsugu Hirokawa, Yoshiharu Iwabuchi
    • 雑誌名

      Chemistry A European Journal

      巻: 30 ページ: e202303548

    • DOI

      10.1002/chem.202303548

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Development of Cubane C-H alkylation via photocatalytic generation of cubyl radical2023

    • 著者名/発表者名
      Masaki Hosaka, Shota Nagasawa, Yoshiharu Iwabuchi
    • 学会等名
      令和5年度化学系学協会東北大会及び日本化学会東北支部80周年記念国際会議
    • 国際学会
  • [学会発表] C-H Alkylation of Cubane via Catalytic Generation of Cubyl Radical2023

    • 著者名/発表者名
      Masaki Hosaka, Shota Nagasawa, Yoshiharu Iwabuchi
    • 学会等名
      IKCOC-15 The 15th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] Selective Synthesis of 1,3-Substituted Cuneanes and Its Application to Bioisosteres of m-Substituted Benzenes2023

    • 著者名/発表者名
      Shota Nagasawa, Kan Fujiwara, Rysei Maeyama, Ryosuke Segawa, Noriyasu Hirasawa, Takatsugu Hirokawa, Yoshiharu Iwabuchi
    • 学会等名
      IKCOC-15 The 15th International Kyoto Conference on New Aspects of Organic Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] 新規光触媒的キュバンC-Hアルキル化反応の開発と応用2023

    • 著者名/発表者名
      保坂 正樹
    • 学会等名
      第38回有機合成若手研究者の仙台セミナー
  • [備考] 抗炎症薬に似た分子の医薬応用可能性を検証 構造等価性に基づく新規医薬品開発への貢献に期待

    • URL

      https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press0115_02web_cuneus.pdf

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公開日: 2024-12-25  

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