研究課題
アルツハイマー病の発症はアミロイドβ(Aβ)ペプチドの凝集に伴う神経毒性によるものが有力視されており、凝集阻害可能なペプチド性リード化合物も報告されている。しかし、現在までにAβの凝集阻害をするペプチドを起源とした有効な機能性分子の創製には至っていない。この状況下、当該年度はペプチドの有する生理活性の発現に関与する構造を維持しつつ、欠点を補うことができる構造変換・修飾する方法論の開拓を試みた。具体的な分子設計として、ペプチド結合の基底状態の模倣体となるように“クロロアルケン型ジペプチドイソスター(CADI)”を考案した。設計を行ったCADIは2種類の戦略によって合成することに成功した。1種類目は、N末端アミノ酸に相当するユニットからC末端側へと逐次的にビルディングブロックを伸長していく“直線的合成法”である。また、2種類目は対照的に、N末端とC末端アミノ酸に相当するビルディングブロックをコンジュゲートさせて誘導する“収束的合成法”の開発に成功した。開発した2種類の合成戦略を適用することによって、多種多様なペプチドミメティックとなるCADIの創製に至っている。
1: 当初の計画以上に進展している
下記の点が区分理由である。・ペプチドミメティックの分野において“直線的合成法”および“収束的合成法”の概念を基盤とした網羅的かつ合理的に開発研究している例は皆無であり、本アプローチは世界に先駆けている。・他の研究グループによる報告事例では合成困難であったペプチドミメティックの創製に成功した。・当該年度に見出した合成戦略を活用することによって、多種多様な誘導体合成が可能となった。
当該年度の研究実績により、“直線的合成法”および“収束的合成法”の概念のもとにペプチドミメティック(クロロアルケン型ジペプチドイソスター)を円滑に合成可能であることを明らかとした。本成果を踏まえて、次年度では、アミロイドβ凝集阻害活性を示すペプチド等に本ペプチドミメティックを導入することで、活性の寄与や凝集阻害機構などの知見を得る方針である。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 6件)
Chemical and Pharmaceutical Bulletin
巻: 72 ページ: 41~47
10.1248/cpb.c23-00618
巻: 72 ページ: 311~312
10.1248/cpb.c24-00013
European Journal of Medicinal Chemistry
巻: 256 ページ: 115449~115449
10.1016/j.ejmech.2023.115449
RSC Medicinal Chemistry
巻: 14 ページ: 1973~1980
10.1039/d3md00258f
Journal of Medicinal Chemistry
巻: 66 ページ: 13516~13529
10.1021/acs.jmedchem.3c00777
巻: 71 ページ: 879~886
10.1248/cpb.c23-00562