本研究は、慢性循環疾患や癌病態増悪に必須な血管病変の増生 (血管新生) 時において、血管内皮細胞の発芽・伸長における”各血管内皮細胞レベルでのNFAT活性化パターンとエピゲノム遺伝子発現調節メカニズム”の理解を目指す。 本研究の実施計画は主に以下の二つである。① 内皮特異的DSCR-1 Tg及びPTIP欠損マウスの確立と血管表現型解析。②VEGF-NFAT/DSCR-1シグナル軸における in vivo ゲノムワイド解析。 ①の計画においては、各マウスの発現解析を実施し、各遺伝子のTgおよびKOが各組織で適切に行われていることを確認し、モデルの妥当性を明らかにすることができた。PTIP欠損に関しては妊娠マウスにおいてPTIP内皮欠損を誘導し、E12.5における胎児表現型解析を実施したが大きな表現型はなく、現在は胎盤評価系や各種病態モデルにおいて検討を進めている。 ②の計画では、内皮特異的DSCR-1 Tgの網膜内皮をP21で単離し、シングルセルRNA解析を実施した。高品質の細胞単離に成功し、適切な条件でシングルセルレベルでのRNA発現解析に成功した。その上で、表現型解析において確認された血管分岐異常を裏付ける、Tip細胞数の減少と静脈由来の内皮増加を認めた。また各細胞集団の変化やRNA発現のパターン変化など、多くの興味深い知見も得ている。 上記成果は本年の第2回ダウン症基礎研究会などで発表を行い、今後論文投稿を目指している。
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