研究課題/領域番号 |
23K14368
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉村 彩 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (60866416)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | メンブレンベシクル / 天然物 / 休眠遺伝子 |
研究実績の概要 |
近年の飛躍的なシーケンス・バイオインフォマティクス解析技術の発展により、細菌ゲノム中には通常の培養条件では発現しない天然物の生合成遺伝子クラスター(休眠遺伝子)が多く存在することが明らかになってきた。それら休眠遺伝子の活性化により天然物の構造多様性の拡張が期待できる。ところが現在、その活性化機構はほとんどの遺伝子について不明である。本研究では休眠遺伝子の活性化機構・方法を解明し、天然物探索基盤の確立を目指す。これまでに申請者はBurkholderia multivorans由来の細胞外膜小胞(MVs)が異種細菌の天然物生産を促進させる現象を見出している。本研究では当該現象の普遍性を検証し、MVsによる天然物生産誘導法を深化・発展させる。 これまでに天然物生産誘導能を示すMVsを放出する細菌種を所属研究室保有のグラム陰性菌ライブラリーから探索した。その結果、天然物生産を促進するMVsを多量に生産する細菌種を7株見出した。それらのうち3株由来のMVsを約50細菌種に添加し、MVs添加時にのみ生産される天然物をLC-MSにて探索した。それぞれのMVsごとに生産誘導する代謝物プロファイルは異なっており、様々なMVsを添加して細菌を培養することが様々な天然物の獲得に重要であることが示唆された。実際に、ヒットした代謝物のいくつかは単離・構造決定し、新規天然物を含む4つの天然物を3菌株から見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では天然物生産能を有するMVsを見出すことを計画していた。すでに約300の環境分離株から7種のMVs生産菌を見出した。それら細菌由来のMVsは採取量が多く、Xenorhabdus innexiに対して天然物生産を誘導した。さらにそのうち3株由来のMVsは多様な細菌種に対して様々な代謝物を生産誘導することを明らかにし、それら代謝物のうち4つの天然物を単離・構造決定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続きMVsが生産誘導する天然物を探索し、単離・構造決定を進める。今年度以降は物理化学的性質を指標とするスクリーニングに加え、抗菌活性評価系も用いることでさらなる天然物の単離を目指す。 並行して天然物生産能のあるMVsとないMVsの構成物質をLC-MSで比較・解析し、天然物生産誘導活性を有する因子を特定する。さらにユニークな天然物が獲得でき次第、MVs生産菌とMVs応答菌間のMVsと天然物を介した異種菌間相互作用の解析を試みる。
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