研究課題
本研究では、微生物の休眠遺伝子活性化による新規天然物の取得を目指して、「微生物の生育環境変化」や「微生物と、同一環境に生育する微生物を含めた生物との相互作用」に着目した培養(環境模倣型微生物培養)等を実施し、新規骨格構造および生物活性を有する天然物の取得を目指す。本年度は(I)培養抽出物コレクションの構築・拡充、(II) 培養抽出物コレクションのスクリーニング、(III)天然物探索資源からの天然物の分離・精製および構造決定、に重点を置き、研究を行った。その結果、香川県にて採取した土壌、海泥より分離した放線菌、真菌により微生物コレクションを拡充し、その培養抽出物のコレクションを作成した。また、動物細胞存在下での微生物の培養 (微生物と動物細胞の共培養) では、千葉大学真菌医学研究センターより入手した放線菌Nocardiaとマウスマクロファージ様細胞株J774.1を使用した。16S rRNAを基にした系統樹解析等により選択した12種のNocardiaを、J774.1存在下、非存在下で培養することで、Nocardiaの共培養抽出物と単培養抽出物を得た。得られたNocardia培養抽出物をLCMS分析やJ774.1に対する細胞毒性で評価した結果、J774.1存在下Nocardia pseudobrasiliensisの培養抽出物を分画対象とした。この共培養エキスを分離精製し、新規ペプチドの単離に至った。
2: おおむね順調に進展している
当初、本年度は (I) 培養抽出物コレクションの構築・拡充、(II) 培養抽出物コレクションスクリーニング、(III)天然物探索資源からの天然物の分離・精製および構造決定、を進める予定であった。(I)-(III)は順調に進んでいる。本年度、新たな微生物コレクションの拡充を進めることができたほか、生物活性試験やLCMSでのスクリーニングにより、選択された微生物培養抽出物から、数種の天然物の単離に至った。また、継続して培養抽出物のスクリーニングも進めている。以上の結果から、研究課題はおおむね順調に進んでいると考える。
令和5年度に研究代表者の所属変更に伴い、研究環境が変化したが、令和6年度は当初の予定通り、令和5年度に引き続き、 (I) 培養抽出物コレクションの構築・拡充、(II) 培養抽出物コレクションスクリーニング、(III)天然物探索資源からの天然物の分離・精製および構造決定、を進める予定である。また、得られた天然物に関しては、その生物活性の解明や天然物の生合成遺伝子の推定なども進めていく。
令和5年度に代表研究者の所属が変更となり、研究室の立ち上げ等により研究を一時的に中止した影響で、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した金額については、消耗品費や旅費等に使用予定である。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (3件)
Heliyon
巻: 10 ページ: e25049~e25049
10.1016/j.heliyon.2024.e25049
Tetrahedron Letters
巻: 121 ページ: 154488~154488
10.1016/j.tetlet.2023.154488
Phytochemistry Letters
巻: 57 ページ: 16~21
10.1016/j.phytol.2023.06.007
https://www.ag.kagawa-u.ac.jp/hara/
https://www.ag.kagawa-u.ac.jp/?p=31694
https://www.ag.kagawa-u.ac.jp/?p=32050