研究課題/領域番号 |
23K14422
|
研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
榎屋 友幸 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (60803260)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
キーワード | トロンボモデュリンα / PLA2G2A / Calprotectin / トロンボモデュリン / TLR4/MD2 / AGER |
研究実績の概要 |
TMαのPLA2G2A及びCalprotectin (CAL)に対する結合様式を明確にするために、functional ELISA assayにより、PLA2G2A及びCALとTMαの結合親和性を推測した。また、CALとTLR4/MD2またはAGERとの結合に対するTMαの競合的阻害効果を検証した。結果①:TMαのPLA2G2Aに対する結合親和性は非常に高値であり、低親和性結合であり、TMαによる抗炎症作用の機序に、PLA2G2Aが関与している可能性は低いと考えられた。一方、TMαは生体内の細胞膜に発現しているTMと同じ構造である。炎症部位では、局所的にTM濃度が高濃度となっている可能性があり、TMとPLA2G2Aの低親和性結合が生物学的プロセスにおいて、どのような役割を果たすのかを解明することが重要であると考えられた。結果②:TMαとCALの結合では、低濃度域と高濃度域で結合親和性が認められた。低濃度域の結合親和性の濃度でTMα濃度を固定し、TLR4/MD2またはAGERを混在させた結果、CALに結合しているTMαの量が低下した。したがって、CALに対するTLR4/MD2またはAGERは、TMαと競合して結合すると考えられた。TMαのCALに対する結合親和性は、TMαを医薬品として投与した際に得られる濃度であり、TMαの抗炎症作用は、CALを介している可能性が示唆された。興味深いこととして、CALとTMαの結合親和性は、高濃度のカルシウム存在下で低下した。CALは、高濃度のカルシウム存在下では、ヘテロ4量体を形成し、TLR4/MD2に対する結合力を失うことが知られている。したがって、TMαはヘテロ2量体のCALに選択的に結合し、TLR4/MD2またはAGERとの結合を競合的に阻害すると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度中に、CalprotectinとBasiginの結合に対するTMαの阻害効果についても検証する予定であった。この点で、少し遅れているように思えるが、Basiginについての検証ができなかった理由として、TMαのCalprotectinに対する結合様式が特殊である様子が見られたためである。TMαのCalprotectinに対する結合様式が特殊でることは、医学薬学的以外に生物学的にとても重要であると考えられ、研究方針の若干の方向修正を行った。したがって、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
TMαのCalprotectinに対する結合様式は、さらに詳細に検証する必要があるため、引き続き令和6年度も実施していく。ヒトTMとPLA2G2Aの結合親和性を推定し、インテグリンαVβ3との競合阻害が、生体内のTMにおいても認められるかどうかを検証し、その後、TMとPLA2G2Aとの相互作用について論文として公表する。また、CalprotectinとBasiginの結合に対するTMαの阻害効果についても検証する。さらにCalprotectinの生体内での機能に対するTMαの阻害作用について、in vivo実験または細胞実験にて検証するための実験準備を進めていく。
|