研究課題/領域番号 |
23K14423
|
研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
山下 修吾 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (30845730)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 薬学 / 薬物動態学 / 体内動態制御 / 高分子ミセル / 疎水性イオン対 / タンパク質コロナ |
研究実績の概要 |
本研究は血中投与後の微粒子表面に形成される血漿由来タンパク質の被覆層、通称「タンパク質コロナ形成」に及ぼす微粒子内核特性の影響について検討する。タンパク質コロナは比較的速やかな微粒子-タンパク質相互作用により形成されるため、微粒子の界面化学的な同一性を表す指標になり得ると考えられてきた。近年、薬物動態学領域ではタンパク質コロナを体内動態予測に応用する研究が盛んである。一方で、高分子ミセルなどの自己集合体型有機粒子をモデル微粒子として用いた検討は少数である。それは表面構造と内部構造が同形である無機粒子と比較して、自己集合体型有機粒子の表面構造と内部構造は異形であり、構造的相違性が及ぼす影響が未知数であるなどの理由が考えられる。しかし、我々は内核極性が異なる高分子ミセルがそれぞれ異なる体内動態を示すこと、そしてそれらミセルと血漿タンパク質との間で形成される分子間相互作用性もまた、内核極性の違いで変化することを見出した。そこで本研究では微粒子内核の極性変化に依存して、タンパク質コロナの組成が変化することで微粒子の体内動態も変化する可能性について、薬物動態学的手法とプロテオミクス解析手法を組み合わせて検討を進めた。令和5年度で得られた成果は内核の極性変化が高分子ミセルの体内動態に影響を及ぼす可能性が示唆された。我々は体内動態の変化と形成されるタンパク質コロナ組成の関係性に着目して研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度では、酸性、中性、塩基性の水溶性アミノ酸を用いた3種のポリエチレングリコール-ポリアミノ酸ジブロックコポリマーを合成した。これらポリマーと酸性度の異なる疎水性薬物(インドメタシン、パクリタキセル、ジピリダモール)を封入することで、ポリマーと薬物の組み合わせが異なる9種の疎水性イオン対型高分子ミセルを調製した。これら高分子ミセルの粒径や表面電荷、ミセル表面の単位面積当たりのポリエチレングリコール密度、薬物封入効率、薬物放出挙動などの物理化学的な基本特性に関する情報を取得した。次に各種高分子ミセルをマウスに尾静脈内投与して、基本的な血中動態プロファイルおよび、臓器分布プロファイルを取得した。これら体内動態情報を基に各種高分子ミセルの薬物動態学的パラメータを算出し、疎水性イオン対の組み合わせパターンの違いに応じた高分子ミセルの体内動態挙動の変化を評価することに成功した。現在はタンパク質コロナ組成を定量するため、プロテオミクス解析条件の最適化を実施中である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度では、疎水性イオン対高分子ミセルとマウス血漿を相互作用させて形成されるタンパク質コロナの組成を、プロテオミクス解析にて相対定量する予定である。加えて、疎水性イオン対高分子ミセルの血管透過性がタンパク質コロナ形成により変化することで、それら高分子ミセルの臓器分布が変化する可能性について、A549細胞を用いて検討する予定である。これら疎水性イオン対高分子ミセルの物性情報、体内動態情報、タンパク質コロナ組成情報を基に、膜透過モデル等を用いた PBPK 解析にて体内動態予測モデルを構築し、予測モデルに対する内核極性パラメータの寄与度を、感度分析を指標に評価する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究活動費として準備していたため。 薬品材料費、論文作成費、学会参加費として使用予定である。
|