研究課題
脳梗塞モデルマウスに対して、正常脳組織から単離したミトコンドリアを、脳梗塞部位に移植することでエネルギー供給源として働かせ, 脳梗塞からの回復を早めることをこれまでの研究より明らかにした。しかし、ミトコンドリア移植を実臨床に応用するためには、患者から正常組織を採取する必要があり、どこの組織であれば患者の精神的・肉体的な負担が少なく、かつ、良質なミトコンドリアを採取することができるのかを解決する必要があった。そこで、本研究では、脂肪組織に着目し、脂肪組織由来ミトコンドリア移植が脳梗塞に対して治療効果を示すことができるのか、脳梗塞モデルマウスを用いて検討した。本年度は、まず正常なマウスを用いて、脂肪組織 (白色および褐色脂肪細胞) からミトコンドリアを単離し、そのエネルギー活性を測定した。具体的には単離されたミトコンドリアのATP活性を測定したが、その結果、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞ではミトコンドリア1 mg当たりのエネルギー活性が異なることが明らかになった。一方で、褐色脂肪細胞のみでの検討は、実臨床において現実的ではないため、白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞を混合し、それから単離されたミトコンドリアのエネルギー活性を測定した。その結果、白色脂肪細胞のみと比べると、混合脂肪組織の方がエネルギー活性が優れていたため、次年度は十分なエネルギー活性が期待できる混合比の脂肪組織から単離したミトコンドリアを用いて、脳梗塞に対する治療効果について検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の混合比によって、ミトコンドリアのエネルギー活性が異なることが明らかとなり、最適な混合比の許容範囲を決定することができた。これは申請時の計画通りである。今後は、この割合を用いた脂肪組織由来ミトコンドリアで、脳梗塞モデルマウスに対して治療効果を示すことができるのか評価していく予定である。
6週齢-雄性マウスの中大脳動脈を人工血栓で4時間閉塞することで、脳梗塞を発症させる。更に、同一マウスから今回明らかになった混合割合で脂肪細胞を採取し、ミトコンドリアを単離する。単離したミトコンドリアは生理食塩液に混和し、脳梗塞発症から4時間後に尾静脈から注射投与することで移植を施す。投与時間の根拠は、既存治療薬である血栓溶解薬のタイムリミットに合わせている。梗塞巣が完成する脳梗塞発症後24時間後に、梗塞巣体積および運動機能障害を評価し、脂肪組織由来ミトコンドリア移植の治療効果を明らかにする。
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細胞
巻: 56 ページ: 39-42
Commun Med (Lond)
巻: 3 ページ: 169
10.1038/s43856-023-00402-w