研究課題/領域番号 |
23K14433
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
宮木 貴之 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (10967730)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ポドサイト / オルガネラ処理 / オートファジー / ボリューム電顕法 / FIB-SEM / アレイトモグラフィー |
研究実績の概要 |
ポドサイトは細胞寿命が長く、加齢により生じる不良オルガネラの処理が細胞の生存に必要となる。ポドサイトと同様に細胞寿命が長いニューロンでは、不良オルガネラの処理にオートファジーが必須の役割を持っており、ニューロンにおいてオートファジーを阻害すると細胞死を生じる。しかし、ポドサイトではオートファジーが機能しているものの、オートファジーを阻害しても細胞死を来さないことが分っている。このことから、ポドサイトにはオートファジーとは異なる不良オルガネラの処理システムが併存すると考えた。 ポドサイトにおけるオートファジー非依存型オルガネラ処理システムの実態を明らかにするため、ボリューム電顕法(FIB-SEMおよびアレイトモグラフィー)を活用し、マウス、ラット、ヒトのポドサイトの連続断面像を観察した。その結果、マウスでは、ポドサイトからボウマン腔に向かって伸び出たアドバルーン状の突出が1細胞あたり数か所に見られ、アドバルーンの内部にはミトコンドリアや多胞体、リソソームが含まれていた。突出部の付け根は非常に細くなっているものも存在することから、この突出はポドサイトから切り離され、内部のオルガネラをボウマン腔へ破棄している可能性がある。また、アドバルーン状突出は一次突起遠位部から伸び出していることが多く、細胞の末端部にあるオルガネラの処理を担っているのかもしれない。同様のアドバルーン状突出はラットやヒトでも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糸球体丸ごとの連続断面が観察可能なボリューム電顕法の一種、アレイトモグラフィーの解析により、ポドサイトからボウマン腔に伸び出るアドバルーン状の突出は、糸球体全体に見られることがわかった。このことからこの細胞現象はポドサイトにおいて頻繁に起きている現象である可能性が高い。ポドサイトにおけるアドバルーン状突出が偶然捉えられた希少な細胞現象ではなく、頻繁に起きている現象であることを示せたことは、本研究計画を進行していく上で、基盤となる成果である。
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今後の研究の推進方策 |
ポドサイトからボウマン腔に伸び出るアドバルーン状の突出は、内部のオルガネラを含んだまま千切れてボウマン腔に放出され、尿として廃棄される可能性が高い。そこでマウス尿を採取して遠心し、尿沈渣に千切れたアドバルーン状突出が存在するか検証する。千切れたアドバルーン状突出がポドサイト由来であることを示すため、ポドサイトの細胞膜特異的に発現する分子(ポドカリキシン)に対して免疫電顕法を使用する。ポドカリキシンの抗体についてはワークすることを確認済である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究においては、アドバルーン状突出解析のため糸球体丸ごとに及ぶ大規模ボリュームの解析が必要である。糸球体丸ごとの電顕撮影には1週間から2週間程度の時間を要し、さらに得られたデータの断面観察および3D再構築には1ヶ月程度要する。そのため当初の予定よりも糸球体の解析数が少なくなり、電顕試料作製に関わる物品費が予想していたよりも安価となった。
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