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2023 年度 実施状況報告書

イノシトールリン脂質代謝酵素Vps34によるグリコーゲン代謝機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K14461
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

森岡 真  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, プロジェクト助教 (00973364)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワードイノシトールリン脂質
研究実績の概要

糖原病は一部の病型を除いて根本的な治療法が存在せず、QOLに及ぼす影響が非常に大きい難病である。イノシトールリン脂質(PIPs)代謝酵素Vps34はPhosphatidylinositol(PI)をリン酸化してPI-3-リン酸(PI3P)を産生する唯一の酵素と考えられている。申請者の所属研究室では筋組織特異的Vps34欠損マウスは心肥大や、心室にグリコーゲンが異常蓄積する糖原病様病態を呈することを見出した。本年度はVps34によるグリコーゲン代謝制御機構の解明のため、必要な基礎解析を実施した。
細胞株、マウス組織、ヒト血清等をサンプルとした、脂質抽出及びオープンカラムによるPIPs選択的な濃縮法を見直し、逆相クロマトグラフィーと三連四重極型質量分析計を用いた多重反応モニタリングによるPIPs検出強度を向上させた。新規高速液体クロマトグラフィー装置と三連四重極型質量分析計が所属研究室に導入されたため、これらの機器を用いたPIPsを含むリン脂質定量解析のセットアップを実施した。
種々の細胞株に対して、複数のVps34阻害剤を処理してPI3Pレベルを測定した。過去に報告されているPI3P結合蛍光プローブで有効と判断される条件において、多くの細胞株のPI3Pレベルは変化しない、もしくはわずかに低下するのみであった。さらに、Vps34の複合体メンバーであるp150を欠損したマウス胚性繊維芽細胞においても、PI3Pレベルは微減にとどまった。この結果を受けて、新たなアプローチからグリコーゲン代謝制御機構の解明を試みる(今後の研究の推進方策を参照)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

PIPsの抽出過程及びオープンカラムによるPIPs選択的な濃縮法を見直すことで、逆相クロマトグラフィーと三連四重極型質量分析計を用いた多重反応モニタリングによるPIPs検出強度を増強することに成功した。加えて、所属研究室に導入された新規高速液体クロマトグラフィー装置と三連四重極型質量分析計を、所属研究室で運用されているリン脂質定量解析を適用可能な状態にセットアップした。これらは当初の研究計画にはないものの、本研究のみならず、研究室全体の研究遂行能力の向上に寄与するものである。
種々の細胞株におけるVps34阻害剤によるPI3Pレベルの変化を、PIPs包括的定量解析技術(PRMC-MS)によって測定した。その結果、過去に報告されているPI3P結合蛍光プローブで有効と判断される条件において、多くの細胞株のPI3Pレベルは変化しない、もしくはわずかに低下するのみであった。さらに、Vps34の複合体メンバーであるp150を欠損したマウス胚性繊維芽細胞においても、PI3P枯渇しなかった。これらの結果は、従来の蛍光プローブ法では追跡できないPI3Pプールや、未発見のVps34複合体の存在を示唆する有意義なものであると考えられる。

今後の研究の推進方策

筋組織特異的Vps34欠損マウスの心筋組織のPI3Pレベル測定が必要である。また、P19.CL6細胞は、培地にDMSOを添加することにより心筋様細胞に分化させることが可能である。この細胞を用いて、CRISPR-Cas9によるVps34のノックアウト、Vps34阻害剤処理、PI3P脱リン酸化酵素の強制発現によってグリコーゲン蓄積が誘導されるか細胞レベルで検討する。この際、PI3Pレベルも測定してグリコーゲン蓄積との連関を明らかにする。ただし、本年度の結果を考慮し、Vps34欠損マウスの心筋組織でPI3Pレベルが大きく変動しない場合は、Vps34によるグリコーゲン代謝制御がPI3Pを介さない可能性を念頭において解析を進める。

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公開日: 2024-12-25  

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