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2023 年度 実施状況報告書

非ウイルス性非アルコール性肝癌の発癌および再発に関連する腫瘍内細菌の同定

研究課題

研究課題/領域番号 23K14491
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

重松 康之  公益財団法人がん研究会, 有明病院 病理部, 医員 (40749511)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード肝細胞癌 / 大腸癌 / マイクロバイオーム
研究実績の概要

1. 肝細胞癌のマイクロバイオームの解析: 当研究では360症例の肝細胞癌患者からの凍結検体から核酸を抽出し、16S rRNAに基づく網羅的解析を準備中である。この研究は、肝細胞癌の発症および進行におけるマイクロバイオームの役割を解明することを目的としている。さらに、組織内の病原菌を検出するための技術開発において、RNA in situ hybridization法の陽性コントロールの作製技術を開発し、これに関する特許を申請準備中である。

2. 大腸癌肝転移巣のマイクロバイオーム解析:大腸癌肝転移後の肝細胞癌の合併と関連する菌を評価するため大腸がんの肝転移を持つ250症例の検体から核酸を抽出し、包括的なマイクロバイオーム解析を実施した。この解析では、細菌及び真菌の同定に加え、特定の病原菌(Fusobacterium nucleatum, PKS-positive E.coli, Bacteroides fragilisの毒素)の定量PCRを行った。F. nucleatumの腫瘍内濃度が全身の免疫応答、腫瘍微小環境、および再発パターンと有意に関連していることを確認し、現在、研究成果を投稿中である。

3. 肝細胞癌に関する新しい知見の収集: マイクロバイオームと肝細胞癌との関係の評価に際して、肝細胞癌の基礎的な知見の収集を目的として、腫瘍細胞とその免疫微小環境との相互作用に焦点を当てた。具体的には、腫瘍に対する免疫応答の開始に重要なタンパク質であるMHC class Iの腫瘍細胞における発現消失が、腫瘍細胞のbiliary/progenitor featureや免疫抵抗性の腫瘍微小環境と関係することを明らかにし論文報告した。また、VETCと呼ばれる組織構築とその免疫抵抗性の腫瘍微小環境が、炎症性サイトカインであるオンコスタチンMの抑制と関連することを明らかにし論文報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

肝細胞癌および大腸癌を合わせた約600の検体からの核酸抽出が完了したほか、その約半数の検体において網羅的なマイクロバイオーム解析が完了した。さらに、肝細胞癌における新たな知見として、腫瘍細胞と腫瘍微小環境との関係性を明らかにし、これらの成果は既に論文化されている。これらは、本プロジェクトの大きな進展と考えられる。

今後の研究の推進方策

今後の研究では、肝細胞癌検体から抽出した核酸を用いて網羅的なマイクロバイオーム解析を実施する予定である。また、ゲノム異常と腫瘍内の微生物群との関連性が指摘されているため、肝細胞癌検体のゲノム異常についても評価を行う。さらに、大腸癌の肝転移から得られたマイクロバイオーム解析の結果と、先行研究から得られた知見を統合し、特定の微生物と臨床病理学的特徴との関連性を詳細に検討していく。

次年度使用額が生じた理由

実験室ですでに購入済みの試薬や物品の使用が可能であったため、それらの費用を節約することができた。翌年分として請求した助成金と合わせて、肝癌および転移性肝癌のゲノム解析やメタゲノム解析用の費用として充てる予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] High Levels of Antidrug Antibodies Against Atezolizumab as a Predictive Marker for Clinical Outcomes in Patients With Hepatocellular Carcinoma2023

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu Yasuyuki、Inamura Kentaro
    • 雑誌名

      JAMA Oncology

      巻: 9 ページ: 725~725

    • DOI

      10.1001/jamaoncol.2023.0108

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Is machine learning-based assessment of tumor-infiltrating lymphocytes on standard histologic images associated with outcomes of immunotherapy in patients with NSCLC?2023

    • 著者名/発表者名
      Inamura Kentaro、Shigematsu Yasuyuki
    • 雑誌名

      Journal of Thoracic Disease

      巻: 15 ページ: 2882~2884

    • DOI

      10.21037/jtd-22-1862

    • 査読あり
  • [雑誌論文] MHC class I loss is associated with biliary/progenitor cell features and “cold” tumor-immune microenvironment in hepatocellular carcinoma2023

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu Yasuyuki、Amori Gulanbar、Tanaka Kazuhito、Kitahama Keiichiro、Kanda Hiroaki、Takahashi Yu、Takazawa Yutaka、Takeuchi Kengo、Inamura Kentaro
    • 雑誌名

      Virchows Archiv

      巻: 483 ページ: 177~186

    • DOI

      10.1007/s00428-023-03568-9

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Potential involvement of oncostatin?M in the immunosuppressive tumor immune microenvironment in hepatocellular carcinoma with vessels encapsulating tumor clusters2023

    • 著者名/発表者名
      Shigematsu Yasuyuki、Tanaka Kazuhito、Amori Gulanbar、Kanda Hiroaki、Takahashi Yu、Takazawa Yutaka、Takeuchi Kengo、Inamura Kentaro
    • 雑誌名

      Hepatology Research

      巻: 54 ページ: 368~381

    • DOI

      10.1111/hepr.13988

    • 査読あり
  • [学会発表] Impact of Oncostatin M expression in tumor microenvironment of hepatocellular carcinoma on pathological features2024

    • 著者名/発表者名
      YASUYUKI SHIGEMATSU, Kazuhito Tanaka, Gulanbar Amori, Kengo Takeuchi, Kentaro Inamura
    • 学会等名
      第21回日本臨床腫瘍学会学術集会
  • [学会発表] Fusobacterium nucleatum in colorectal cancer liver metastasis: Characteristics and implications2024

    • 著者名/発表者名
      Yasuyuki Shigematsu, Rumiko Saito, Gulanbar Amori, Hiroaki Kanda, Yu Takahashi, Kengo Takeuchi, Shunji Takahashi, and Kentaro Inamura
    • 学会等名
      第113回日本病理学会総会
  • [学会発表] Impact of Oncostatin M expression in tumor microenvironment of hepatocellular carcinoma on pathological features2023

    • 著者名/発表者名
      Kazuhito Tanaka, Yasuyuki Shigematsu, Hiroaki Kanda, Yutaka Takazawa, Kengo Takeuchi, and Kentaro Inamura
    • 学会等名
      第112回日本病理学会総会
  • [学会発表] MHC class I loss is associated with biliary/progenitor cell features and “cold” tumor immune microenvironment in HCC2023

    • 著者名/発表者名
      Yasuyuki Shigematsu, Gulanbar Amori, Hiroaki Kanda, Yu Takahashi, Yutaka Takazawa, Kengo Takeuchi, and Kentaro Inamura
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術総会
  • [図書] 特集 マイクロバイオームが切り拓く肝胆膵の新未来 巻頭言 腸内細菌と肝胆膵疾患 - 病態への関与と制御に向けた試み - (マイクロバイオームと腫瘍免疫の項)2023

    • 著者名/発表者名
      重松康之, 稲村健太郎 (分担執筆)
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      アークメディア

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公開日: 2024-12-25  

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