研究課題
小腸上皮タフト細胞は、寄生虫感染の察知とその排除を担うケモセンシング細胞である。本研究では、タフト細胞が受容する寄生虫由来のリガンドとその受容体の同定を試みることで、タフト細胞が寄生虫感染をどのように察知するのかについての分子機構の解明を目指す。さらに、寄生虫を受容したシグナルが細胞内でどのように伝達され、免疫応答の誘導や虫の排除に繋がるのかという分子機構を明らかにする。この点については、タフト細胞に特異的な発現を示すカルシウムシグナリング関連因子に着目し、タフト細胞がその細胞機能をどのように制御しているのかについて明らかにする。以上により、タフト細胞を介した寄生虫感染応答機構の学術的理解の深化を目指す。初年度の令和5年度は、タフト細胞が受容する寄生虫由来のリガンドの同定を目指して、寄生虫培養上清(NES)を粗分画し、その大まかな性質解析とクロマトグラフィーによる分画条件の検討を進めた。その結果、候補リガンドは分子量が比較的小さい化合物であることが推定された。また着目するカルシウムシグナリング関連因子を欠損したマウスと野生型マウス由来の小腸上皮の組織培養を行い、寄生虫培養上清NESを添加した際のタフト細胞由来のロイコトリエンの放出能を評価したが、予想に反して両群間には顕著な差がないことが分かった。今後、ロイコトリエン以外のメディエーターの分泌能やタフト細胞の他の細胞機能への影響等を評価することで、着目しているカルシウムシグナリングの調節機構が特異的に制御するタフト細胞内の機能の発見とその意義を明らかにできる可能性がある。
3: やや遅れている
初年度はタフト細胞が受容するNES中のリガンドの同定を目指していたが、分画法の検討に時間を要しており、進捗が遅れている。一方で、タフト細胞におけるカルシウムシグナリングの調節機構と細胞機能への影響の評価については、着目する因子の有無はタフト細胞から放出されるロイコトリエンの分泌能に影響を与えないことが分かった。タフト細胞が放出するロイコトリエン以外のメディエーターの分泌能やタフト細胞内の他の細胞機能への影響等、新たな観点での追究が必要なものの、概ね計画に沿って進められている。
初年度の計画に引き続き、分画法の検討をさらに進め、質量分析計やNMRを用いた解析により、リガンド同定、さらにはその受容体の同定も目指す。一方で、タフト細胞におけるカルシウムシグナリングの調節機構の意義を明らかにする研究については、ロイコトリエン以外のメディエーターの分泌やカルシウムシグナル自体の挙動の観察を試みることで、その調節機構の生理的意義を追究する。
令和5年度は未使用額9,080円があるものの、予算計画に対し99%の執行率でほぼ計画通りの使用である。未使用額については、令和6年度に消耗品費として使用する。
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Proteins
巻: 0 ページ: 1-14
10.1002/prot.26695