研究実績の概要 |
本研究では、げっ歯類の寄生虫絵あるベネズエラ糞線虫感染に伴う細胞間接着の構造と接着タンパクの発現変化を形態学的・分子生物学的視点から解析することを目的としており、本年度は糞線虫感染マウス小腸上皮組織において電子顕微鏡観察による超微形態の解析および免疫組織化学により細胞間接着の構造および接着タンパクの発現動態の解析を行った。 透過型電子顕微鏡観察により、糞線虫感染8日目C57BL/6マウス小腸上皮において糞線虫の虫体が宿主細胞死を伴わずに宿主上皮細胞間に侵入していることを確認した。この際、糞線虫侵入部位に接する宿主上皮細胞では上皮細胞間接着が破綻しており、細胞間が開裂していることを観察した。虫体侵入部位近傍であっても虫体に接しない部分の細胞には明らかな変化は認めなかった。一方で虫体が排除された後である感染14日目のマウス小腸上皮は宿主上皮は非感染時と同様であり、糞線虫感染による効果は一時的であることを確認した。以上より糞線虫は宿主小腸上皮に侵入時、非常に局所的かつ非侵襲的に上皮細胞間結合を破綻していることが示唆された。引き続いて糞線虫感染8日目のマウス小腸上皮におけるタイト結合関連タンパク(Claudin-1, ZO-1)の免疫組織化学により発現変化を検討したが、全体の発現パターンに明らかな変化はなく、非感染マウスおよび感染13日目マウスの結果と明らかな差異を認めなかった。この結果も糞線虫が局所的に宿主上皮細胞間結合を破綻させていることを支持するものとなった。
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