本研究では、A型およびB型ボツリヌス毒素複合体(L 毒素)とムチンの相互作用を解析することにより、ボツリヌス毒素の強毒型と非強毒型の腸管吸収を決定づけるメカニズムを明らかにする。申請者らは先行研究により、強毒型であるB型L毒素は非強毒型であるA型L毒素とは異なり絨毛上皮の吸収上皮細胞からも吸収されることを見出した。本年度の研究により、この吸収経路の違いはL毒素とムチンの相互作用に依存することが示唆された。株(subtype)による毒素の経口毒性の違いとムチン相互作用の連関を明らかにするために、mucin ELISAを用いた糖競合阻害実験および糖鎖アレイを行った。その結果、B型L毒素とA型L毒素では、異なる様式でムチン糖鎖と結合することが明らかになった。また、変異体実験により、このムチン結合は毒素の1アミノ酸の違いによって引き起こされることを明らかにした。毒素のsubtypeにより異なるムチン糖鎖との相互作用がボツリヌス毒素の経口毒性に重要なのかを検証するために、糖鎖X合成酵素を欠損したマウスを作製した。糖鎖X合成酵素欠損マウスは、非強毒型であるA型L毒素の経口投与に対しては野生型マウスと同等の感受性を示す一方で、強毒型であるB型L毒素の経口投与では野生型マウスと比較して耐性を示した。以上の結果から、ボツリヌス毒素複合体は株(subtype)により小腸ムチンとの相互作用が異なりを強毒型と非強毒型が決定づけられることが示唆された。
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