研究実績の概要 |
成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma, ATL)はヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-cell leukemia virus type I, HTLV-1)感染で引き起こされるT細胞性腫瘍である。がん化した感染T細胞(ATL細胞)は主に、末梢血やリンパ節、皮膚に出現し、その臨床病態は多彩である。本研究は、同一ATL患者から得られた末梢血および病変組織に対する単一細胞遺伝子発現解析(single-cell RNA-seq, scRNA-seq)を行い、病変部位特異的なATL細胞の特徴および病変部位ごとのがん免疫微小環境を明らかにすることを目的としている。この解析方法は、一細胞ごとの遺伝子発現量を取得でき、希少細胞の同定や細胞集団内での遺伝子発現の比較に有用なツールである。また、遺伝子発現情報に加えて、T細胞受容体(T-cell receptor, TCR)遺伝子のデータを同時に取得することで、病変部位間のATL細胞の同一性を確認でき、さらに正常T細胞との鑑別に有用であるため、T細胞性腫瘍においてより詳細な検討が可能である。現在までに、ATL患者3症例の末梢血とリンパ節病変がマッチしたscRNA-seqデータを取得した。現在、これらのデータを用いて、ATL細胞における病変部位特異的な発現変動遺伝子やパスウェイについて解析を行っている。さらに、ATL細胞を取り巻くがん微小環境についても同時に解析を行なっている。
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