研究課題/領域番号 |
23K14576
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
田中 伯享 関西医科大学, 医学部, 助教 (30815882)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | KRAS / HIF-1A |
研究実績の概要 |
現状、承認されているG12C変異陽性のKRASを選択的に阻害可能なKRAS阻害剤について、薬剤感受性や耐性メカニズムに関する解析は急速に進んでいる一方で、他の作用に関する研究は未解明な点が多く、本研究はKRAS阻害剤ががん微小環境、とりわけ低酸素応答に与える影響に焦点を当てて解析を進めている。 KRAS(G12C)変異陽性のがん細胞をKRAS阻害剤で処理した時、HIF-1Aの発現量が減少する細胞と変動しない細胞が存在することを明らかにした。KRASの処理に伴うHIF-1Aの減少が生じるメカニズムについてさらなる解析をするべく、転写、翻訳、タンパク質分解のどの過程が最も大きな影響を評価したところ、翻訳阻害効果によって短時間で顕著なHIF-1Aの減少を誘導していることを示唆する結果を得た。KRAS阻害剤の処理によってHIF-1Aの翻訳阻害が生じるメカニズムについては現在解析中であるが、特定の分子量のポリソームの蓄積が生じることを確認している。さらに、MG-132の処理によってHIF-1Aタンパク質を安定化させた条件下でもKRAS阻害剤によるタンパク質の減少がわずかながら認められていることから、プロテアソームに依存しないタンパク質分解経路の関与も示唆されている。また、KRAS阻害剤に対する耐性を獲得した細胞についてRNAシークエンス解析を行ったところ、低酸素応答に関連する遺伝子群が増大することを確認している。しかしながら、HIF-1A阻害剤とKRAS阻害剤の併用では同耐性を克服しなかった。現在はKRAS阻害剤への耐性獲得によって低酸素応答関連遺伝子の発現量が増大するメカニズムやin vivoで実際に低酸素応答が増大しているかという点について評価をするための準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KRAS阻害剤とがん微小環境への影響について、これまで解析が不十分だった領域において、その一端として低酸素応答の中心分子であるHIF-1Aに対する影響について解析が進んでいる。現在はin vitro条件の解析が主ではあるが、KRAS阻害剤がHIF-1Aの減少を誘導するメカニズムひいては腫瘍の低酸素応答に影響し得る現象について解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
HIF-1Aを中心とした低酸素応答に関する評価ということで、今後はin vivoの解析を進める予定である。KRAS阻害剤が腫瘍関連の低酸素環境や血管新生にどのような影響を与えるかについて評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vivo実験のためのマウス購入費や当該実験に伴う遺伝子組み換え実験を予定していたが、本年度は条件検討の段階で終了したため、次年度は主にin vivoの本実験のために使用予定である。
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