研究課題/領域番号 |
23K14741
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
浦手 進吾 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (90963455)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 心腎連関症候群 |
研究実績の概要 |
近年、様々な病態形成に、複数の臓器間ネットワークの関与を示唆する知見が集積しつつある。心不全治療薬であるアンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬(通称、ARNI)は、心腎連関症候群における臓器保護効果を有する事が推定されているが、その機序の詳細は不明である。本研究では、複数の心腎連関モデル動物に対してARNIを投与し、その効果を、心臓・腎臓における網羅的解析を交えて検証し、心腎連関症候群の病態進展機序およびARNIによる治療メカニズムを分子レベルで明らかにする。アンジオテンシンⅡ投与 (A)と片腎摘出 (N)、食塩水負荷 (S)を行ったANSマウスを作製し、ARNIとARB(バルサルタン)による治療効果を比較検討した。ARNIとARBはどちらもANSマウスの血圧上昇を有意に抑制した。ARNIはさらにANSマウスの心不全(左室収縮力の低下)や心線維化をARBよりも改善させた。一方、腎臓については、ARNIよりもARBの方が、ANSマウスのアルブミン尿抑制や腎線維化・糸球体肥大の抑制効果において優れていた。そこで、さらに腎臓を詳細に解析したところ、ARNIによる治療ではANSマウスで亢進していたホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)-Aktシグナリングパスウェイの抑制が、ARBと比べて不十分であることがわかった。このPI3K-Aktパスウェイを阻害薬をARNI治療に併用することで、ARBと同程度までARNIの腎保護効果が発揮された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4型心腎うっ血病態モデルマウスにおいて、ARNIはアンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)に比べて、優れた心保護効果を示す一方、腎臓に対してはARBよりもむしろアルブミン尿や線維化を悪化させる、との新知見を見出した(Tsukamoto S, et al. European Heart Journal Open 2023)。引き続き、心腎うっ血病態モデルマウス以外の心腎連関モデル動物に対してもARNIとARBを比較した効果について検証を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ARNIの心腎連関モデル動物における分子レベルでの作用機序をさらに検証していく。
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