研究課題/領域番号 |
23K14759
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中原 圭一 熊本大学, 病院, 講師 (60648591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 野生型ATTRアミロイドーシス / 末梢神経障害 / 小径線維ニューロパチー / Sudoscan / 表皮内神経線維密度 / ニューロフィラメント軽鎖 / プロテオーム解析 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
加齢とともに高齢者に生じる野生型トランスサイレチン(ATTR)アミロイドーシスは心不全や手根管症候群などの原因として重要な疾患であり、5年生存率は35.7%と予後不良である。しかし、2019年に本症の生命予後を改善する疾患修飾療法が適応となり、さらに核酸医薬の治験も現在進行中であり、治療法が劇的に進歩している。一方で、これらの薬剤の進行期の効果は乏しいため、本症をいかに早期診断するかが大切である。 大規模な国際的調査では、本症患者を診察したところ28%で感覚性ニューロパチーが存在することが報告されているが、生理機能検査などで裏付けられた研究はこれまでない。また、下肢末端のしびれ感を訴える本症患者は多く、当教室で行った表皮内神経線維密度は健常者に比べ、有意に低下しており、小径線維ニューロパチーの合併が考えられた。 日常診療の中で高齢者がしびれ感を訴えることはよく経験する。実際に高齢者では小径線維ニューロパチーの頻度が高いことが報告されている。そのため、しびれ感を訴える高齢者の中に、本症が潜んでいる可能性があると考えられる。そこで本研究では、①野生型ATTRアミロイドーシス患者の小径線維ニューロパチーの頻度および特徴の解明、②本症のスクリーニングおよび早期診断に有用なバイオマーカー探索を目的としている。 前年度までに7例の野生型ATTRアミロイドーシス患者を登録した。2例で遠位筋に軽度の筋力低下、5例で温痛覚低下、6例でdysesthesiaを認めた。神経伝導検査は6例に施行し、3例で腓腹神経の感覚神経活動電位が低下していた。Sudoscanによる解析では7例中4例で低下しており、そのうち2例で著明な低下を示した。併せて、血清ニューロフィラメント軽鎖の測定、プロテオーム解析を行うべく血清サンプルの収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに7例の野生型ATTRアミロイドーシス患者に対し、臨床症候の評価、末梢神経伝導検査、Sudoscanを行い、血清ニューロフィラメント軽鎖の測定、プロテオーム解析を行うべく血清サンプルの収集も行った。しかし、症例の登録数がまだ少なく遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに症例の登録数を増やし、小径線維ニューロパチーの頻度を確認するとともに、さらに血清サンプルを収集する。また、登録症例の臨床情報の解析や血清サンプルのバイオマーカー値との関連性の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
超低温フリーザー、試薬用冷蔵ショーケースを計上していたが、学内施設の超低温フリーザー、試薬用冷蔵ショーケースを使用することが可能となった。また、Sudoscan用プレート電極も計上していたが、残余のプレート電極で検査可能であったため次年度使用額が生じた。次年度以降、症例の登録数を増やし解析予定であるため、Sudoscan用プレート電極の追加購入し、バイオマーカー探索目的に関連試薬および消耗品を購入する。また、研究成果を発表するために国内旅費にも使用する予定である。
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