研究課題
急性期脳梗塞の予後改善のための迷走神経刺激による革新的神経保護デバイスを開発することを目的として、以下の研究を実施した。【急性期脳梗塞イヌモデルの確立】下記方法による急性期脳梗塞イヌモデルの確立、データ収集、論文化に向けて、7T MRIでの脳画像撮影の準備を進めた。1) 体重10 kg前後のビーグル犬を使用。2) 自家血栓の作成・形成。翼状針(チューブ長30 cm、チューブ内径1.2 mm)を用いて静脈採血し、37℃の恒温槽で2時間インキュベートしたのち、4℃の庫内で24時間置く。作成された血栓を、PE-50チューブで吸引・押し出しを繰り返し、細径の自家血栓を形成する。PE-50チューブ内に形成血栓を格納し、中大脳動脈閉塞のタイミングまでは、4℃の庫内で保管。3) ビーグル犬に対して全身麻酔・気管挿管を実施し、仰臥位とする。4) 6F FUBUKI 80 cmをガイドカテーテル、GuidePost 120 cmを中間カテーテルとして、マイクロワイヤを用いてSL-10 150 cmを中大脳動脈M1部遠位へ誘導する。5) 血栓をSL-10ハブから挿通し、中大脳動脈内にあるSL-10先端から押し出してM1部を閉塞。6) 一定時間の経過後、アクチバシン600万国際単位をSL-10から動注し、閉塞部を再開通させる。【急性期脳梗塞に対する迷走神経刺激の効果検証】コイル閉塞による脳梗塞イヌモデルを用いて、経静脈的迷走神経刺激カテーテルによる迷走神経刺激を実施した。梗塞容積の縮小効果を検証するまでのデータは蓄積されていないが、脳梗塞イヌでの迷走神経刺激が安全に実施可能なことを実証した。【急性期脳梗塞治療に最適な迷走神経刺激デバイスの開発】現在設定している新規デバイスの開発コンセプトに則って小型の刺激装置を作成し、実際にイヌにおいて迷走神経が刺激できることを確認した。
3: やや遅れている
急性期脳梗塞イヌモデルのデータ収集実験を、予定通りのスケジュールでこなしていくことができなかった。
研究代表者の所属が2024年度から変更となった。それにともなって2023年度に存在した、研究計画策定期初に予測できなかった職位上の研究制限がなくなり、研究チームの再編を実施した。2024年度は計画的な実験遂行が十分に見込まれ、これまでの研究の進捗遅延を取り戻せる確度は高い。2024年度はイヌモデルの確立と論文化に加えて、迷走神経刺激のproof of concept実験を実施し、同時にプロトタイプの作成・実証も進めていく。具体的には、イヌモデル確立実験を計5回実施し、その後proof of concept実験に移行する。Proof of concept実験では、迷走神経刺激vs非刺激でのランダム化を実施し、計16回の実験が必要である。プロトタイプに関しては、工学研究者と共同での開発を進め、2024年度はデバイスの超小型化と刺激の実証を行う。
研究を計画した期初の段階で予測できなかった職位上の制限があり、研究を当初計画通りに進めることが困難となった。研究協力者とともに、モデル動物の確立、proof of concept実験、デバイスプロトタイプの作成等、一定の成果をあげることができたが、研究従事への一定の制限のため、研究進捗が遅延し、そのために実験器具の購入やデータ解析まで研究を進められなかった。2024年度より研究代表者の所属が変更となり、研究協力者を含めて新たにチームを編成することができた。2023年度に存在した制限はもはや存在せず、計画に基づいて研究を進めていける環境を構築できている。2024年度には、モデル動物の確立、proof of concept実験の実施、デバイスプロトタイプの作成を進める予定であり、実験動物の購入、実験用カテーテル類の購入、実験用薬剤の購入、学会参加、論文投稿を主な用途として助成金を使用する計画である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 3件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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