研究課題/領域番号 |
23K14824
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
一條 貞満 横浜市立大学, 医学研究科, 特任助教 (50959533)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 精神神経疾患 / シナプス / AMPA受容体 |
研究実績の概要 |
依存症疾患の病態解明を目的として依存症患者の脳内AMPA受容体分布情報に基づきマウス動物モデルを作成しその行動表現型を評価した。 嗜好性物質を使用した検討に先立ち、嗜好性物質を使用しない条件下におけるモデルマウスの行動表現型を評価した。その結果、脳内局所のAMPA受容体量を減少させ、集団飼育環境下に置かれたマウスは異常な行動表現型を示さなかった。しかし、脳内局所のAMPA受容体量を減少させ、個別に飼育し社会的隔離ストレスを与えたマウスは社会的選好性の低下などの精神疾患様行動表現型を示した。一方、脳内局所のAMPA受容体量は操作せず、社会的隔離ストレスのみを与えたマウスは異常な行動表現型を示さなかった。 物質依存症の場合、嗜好性物質に対する依存のしやすさに加えて嗜好性物質の使用に至るまでの行動が依存形成に重要である。覚醒剤依存症の場合、使用後の依存率は極めて高い。動物モデルの元となったヒトPET研究においても覚醒剤依存症患者が多く含まれていた。これらの事実からは、脳内AMPA受容体分布異常とストレスの2つの要因が連関して依存症の病態を形成していることが示唆される。 今後は脳内AMPA受容体分布異常とストレスの2つの要因がもたらす行動異常について詳細に調べると同時に、2つの要因の関係性を調べるため、ストレスの有無、脳内AMPA受容体分布異常の有無に着目した分子生物学的評価を行い、さらなる病態解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初依存症の病態を解明するための検討として主に嗜好性物質を使用した実験を予定していたが、予備検討を進めていく上で、作製した動物モデルはストレスの有無により、嗜好性物質を使用しない状態での行動表現型が異なることが分かった。覚醒剤等依存性が高い嗜好性物質に対する依存症の発症には、嗜好性物質使用前の行動が重要である。そのため、今年度は嗜好性物質使用前のマウスを使用して、ストレスの有無、AMPA受容体分布異常の有無による行動表現型を詳細に評価した。当初予定していた実験系とは異なるものの、依存症性疾患の病態解明という目的においては重要な知見が得られており、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
依存症性疾患の病態生理への関与が示唆されたAMPA受容体の脳内分布異常とストレスの関係性に着目し、行動表現型評価に加えて分子生物学的な評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予算通り執行したが若干の残額が発生した。発生した次年度使用額は実験試薬の購入に充てる予定である。
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