研究実績の概要 |
研究計画の通り、抗PD-L1抗体を内包化し徐放するピッカリングエマルジョンを開発し、その基礎特性を評価することを目的として、in vitroの実験を行った。 リピオドールとポリ乳酸-グリコール酸共重合体[Poly (lactic-co-glycolic acids): PLGA]ナノ粒子、抗PD-L1抗体を混合してリピオドールピッカリングエマルジョン(Lipiodol Pickering Emulsion: LPE)を作成した。まずは抗PD-L1抗体の内包化を確認するため、PLGAナノ粒子と抗PD-L1抗体を蛍光標識した上で、共焦点レーザー顕微鏡(LSM710)を用いて観察することで、抗PD-L1抗体がPLGAナノ粒子によりリピオドール中に内包化されることを確認した。次に、LPEの安定性を評価するため経時的な外観観察と光学顕微鏡(BZ-X800L)による観察とエマルジョンの粒径測定を行った。LPEは抗PD-L1抗体を含む通常のリピオドールエマルジョンと比較して、長期的に安定で粒径は有意に小さかった(P<0.001)。さらに徐放能を評価するため、LPEと通常のリピオドールエマルジョンをそれぞれ滴下した生理食塩水を振盪浴(37℃, 150rpm)中でインキュベートした。上清を定期的に回収し、放出された抗体量をBCAアッセイで定量した。LPEは抗体の放出速度がより緩徐であり、早期にプラトーに達した通常のリピオドールエマルジョンと比較して、2週間の期間で漸増性に徐放量が増加した(2週間後の平均徐放量: LPE 82.3μg/mL, 対照群 34.4μg/mL, P<0.001)。以上のように、LPEは抗PD-L1抗体を内包化でき、徐放能が通常のリピオドールエマルジョンより向上することが確認された。
|