脂肪性肝疾患において肝炎の鑑別には病理学的診断が必要である。しかし肝の脂肪化はしばしば不均一に生じて、針生検組織を同じ場所から採取しても脂肪量が大きく異なるため、肝全体の脂肪化の程度と分布の評価が困難となる。画像ではそれが可能である一方、CTは肝機能障害に伴う脂肪や鉄など金属の沈着、線維化や炎症といった多種の現象を分離困難であり、MRのプロトン密度脂肪率(proton density fat fraction; PDFF)は金属の影響を大きくうけ脂肪量を過大評価するというそれぞれの短所がある。加えて、CT画像では、同じ肝脂肪量・同じ撮像条件でも患者の体格や各臓器の大きさ、ガスや術後の金属によってX線減弱が複雑におこり、肝臓内における実効エネルギー、つまりCT値が変動する。 これらの限界の克服には、患者とともに脂肪の標準物質を撮像することが有効であるが、①CTの実効エネルギーの変動に対応でき、MRでも使用するには、固体でなく水分を含有し、かつ②脂肪と基質が長期間にわたり均一に混和された状態にある必要がある。本研究ではゲルファントムを標準物質に用いて、脂肪肝の評価のためのMRとCTとの定量的互換性を高める方法を開発する。 MRIにおけるPDFFの最適化のための基礎実験では、PDFFの精度に影響を及ぼすT1バイアスに関わるMRIのパラメータ(フリップアングルとTR)の撮像条件の検討を行った。本検討は第80回日本放射線技術学会総会学術大会で採択された。
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