研究課題/領域番号 |
23K14945
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
加藤 耕治 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40844056)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 3C症候群 / レトリバー複合体 / エンドソームリサイクル機構 / WASH複合体 |
研究実績の概要 |
3C症候群は中枢神経系、心臓、筋骨格系などに形成異常を呈する先天異常症候群で、VPS35L、CCDC22、WASHC5、DPYSL5が原因遺伝子として知られている。VPS35L、CCDC22、WASHC5はそれぞれレトリバー複合体、CCC複合体、WASH複合体の構成蛋白としてSNX17依存性の膜蛋白リサイクル機構に関与している。しかし、WASH複合体はレトロマー複合体依存性リサイクル機構に強く関与していることが報告されており、VPS35L、CCDC22、WASHC5変異による患者の病態が同一なのかは明らかでなかった。そこでVPS35L、CCDC22、WASHC5の遺伝子欠損細胞を樹立し、膜分画を用いたプロテオーム解析により膜蛋白の発現変化を網羅的に検討した。結果として、VPS35L、CCDC22、WASHC5の遺伝子欠損細胞はとても類似の膜蛋白の発現変化を示し、ITGB1やLRP1など既知のSNX17依存性膜蛋白は3つの遺伝子欠損細胞で有意に低下していた。興味深いことに、WASHC5の遺伝子欠損細胞においてもレトロマー複合体依存性膜蛋白の発現変化は有意ではなく、VPS35L、CCDC22の遺伝子欠損細胞とほぼ同様の表現型であった。この原因を検討するためにWASHC5の欠損がWASH複合体に与える影響を確認したところ、WASHC5の欠損によってWASHC1からWASHC4の全てのWASH複合体構成蛋白の発現量が有意に低下していたものの、WASHC2の発現量は相対的に保たれており、またWASHC2の細胞内局在も保たれていた。WASHC2はレトロマー複合体依存性リサイクルに重要な役割を果たすことが知られているため、この残存機能がレトロマー依存性リサイクルには充分であるが、レトリバー複合体依存性リサイクルには不十分である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3C症候群の病態解明のため、作成予定であったすべての遺伝子欠損、レスキュー細胞を樹立し、予定通りにプロテオーム解析を行うことが出来た。当初予定していた実験を行い、結果も得られているため順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
既に得ているVPS35L、CCDC22、WASHC5の各遺伝子欠損細胞を用いたプロテオーム解析の結果を基に、中枢神経系や筋骨格系、循環器系など3C症候群で明確な表現型を示している組織の病態をリサイクル機能不全による膜蛋白機能不全の観点から検討する。既に病態に関与し得る膜蛋白の候補を幾つか抽出済みであり、それらの候補の膜蛋白が実際にVPS35Lなどのリサイクル機構に制御されているのか、VPS35L欠損により発現変化が生じるのか、そしてそれにより膜蛋白の機能異常を来すのかを検討し、病態との関連を明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進展したことにより、条件検討などの期間が短く、予定よりも機器使用回数や試薬の使用量が少なくて済んだため。
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