研究課題/領域番号 |
23K14949
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
芦名 満理子 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (50836442)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 新生児ビタミンK欠乏症 / 高感度PIVKA-Ⅱ |
研究実績の概要 |
新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症は、神経学的後遺症および死亡を引き起こす予後不良疾患である。新生児ビタミンK欠乏症の診断にはビタミンK欠乏の特異的な指標であるPIVKA-Ⅱ測定を用いるが、本邦で用いられているラテックス凝集法(LA法)によるPIVKA-II測定は、必要検体量が多いこと、院内測定が困難なこと、などの理由から十分に普及していない。 新生児ビタミンK欠乏症例に対して選択的に十分量のビタミンK製剤を経静脈的に補充することが望まく、そのためには、出血出現前にビタミンK欠乏状態を検出可能なスクリーニング検査が必要である。本研究では悪性腫瘍の診断補助等に用いられている電気化学免疫測定法(ECLIA法)による高感度PIVKA-Ⅱ測定を用いて、新生児における高感度PIVKA-Ⅱの基準値を決定し、新生児ビタミンK欠乏症の診断方法の確立および新生児ビタミンK欠乏症危険因子の同定を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年6月1日から2022年3月31日の間に当院に入院し、臨床データとPIVKA-IIデータが得られた1759例(正期産児11671例:早産児:592例)を後方視的に解析した。PIVKA-II陽性例(≧50 mAU/mL)の全発生率は42.8%で、VK欠乏症は0.6%(≧5000 mAU/mL)、 実験的VK欠乏症は3.1%、(1000-4999 mAU/mL)、潜在的VK欠乏症は10.7%(200-999 mAU/mL)であった。PIVKA-II陽性例の発生率は、早産児群より正期産児群で有意に高く(49.4%対29.7%、p<0.001)、在胎週数はPIVKA-II値と相関していた(r2=0.117、p<0.0001)。血清PIVKA-II値の中央値とPIVKA-II陽性例の発生率(≧50 mAU/mL、16.4%)は出生時よりも日齢5の方が低く、出生後のVK予防投与の影響を反映していると思われた。VK欠乏性出血と診断された乳児は1例のみであった(PIVKA-II値、出生時:10,567 mAU/mL、日齢5:2418 mAU/mL)。VK欠乏症は、早産児よりも正期産児に多くみられた。
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今後の研究の推進方策 |
出血症状を呈した症例、著名高値例を除いた症例を対象に平均、範囲を決定し、平均値+2SD を超えた症例を新生児潜在性 VK 欠乏症と定義する。これらと正常対照との患者背景の比較から、母体因子を含めた周産期の臨床的危険因子を同定する。更に、得られた結果から同定した顕在性および潜在性ビタミン K 欠乏症例を前方視的に収集し、保存臍帯から DNA を抽出し SNP アレイによる GWAS 解析を行う。その結果を、東北メディカルメガバンク等の健常者データと比較し、遺伝的素因を同定する。高感度 PIVKA-Ⅱ測定期間を生後 3 ヶ月まで拡大し、新生児から乳児期の高感度 PIVKA-Ⅱ基準値の経時的変化、ビタミン K 予防投与や出生後臨床経過が高感度 PIVKA-Ⅱ値に及ぼす影響を検討し、乳児期までの 1 週間毎の高感度 PIVKA-Ⅱ基準値の作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 pandemicの影響により、臨床および研究活動が一時的に停滞した。また、参加予定であった国際学会等への参加が困難であった。今年度は、成果発表を含め平時の研究活動に復帰し、当初の計画に則り支出する予定である。
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