研究課題/領域番号 |
23K14976
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金橋 徹 京都大学, 医学研究科, 助教 (90875999)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ヒト胎児 / 拡散テンソル画像 / 形態形成 |
研究実績の概要 |
ヒト胎児を対象とした形態形成の解析は、標本の希少性や構造の複雑さ等の問題から、身体の一部のみ、もしくは身体全体の単純な計測にとどまっており、詳細な解析は進んでいない。MRIは非破壊的に立体情報を得るだけでなく、物質の配向性を知ることも可能である。拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging; DTI)は線維の向きに沿って、水分子の拡散が早く進むことを利用して、線維走行を描出することができる。本研究はヒト胎児固定標本のDTI撮像データを用いて、全身諸器官の微細構造の形成について明らかにする。 当初は、島根大学医学部解剖学講座保有の外表及び内部器官に異常が見られない、胎児期初期のヒト胎児固定標本30例(頭殿長34~100 mm)を対象としたが、同講座が保有する、より大きなヒト胎児を撮像できる環境が整備できたため、頭殿長100mm~129mmまでのヒト胎児20例を追加してMRI撮像を進めた。 DTIと共にT1強調画像も取得し、両画像を併用して、以下の関心領域の設定を進めた。a) 胃、十二指腸の消化管壁、b) 僧帽筋などの背部の筋組織。a),b)について関心領域設定後、線維走行を3次元的に描出できるtractographyの作成及び、拡散異方性を表す異方性比率(Fractional anisotropy [FA])を算出し、観察した。胃のtractographyでは、全体的に輪状に走行する線維が明瞭に描出されている一方で、縦走や斜走する線維は比較的少なく、一部に限定してみられた。噴門部と幽門部のFA値は他の部位よりも高値であった。僧帽筋では起始部と停止部を同定でき、筋の一部で、成人とは異なる線維走行を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画より大きなヒト胎児固定標本の撮像が可能になり、撮像個体数が増えたが、撮像と解析を同時に進めることができたため、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
a) 胃、十二指腸の消化管壁、b) 僧帽筋などの背部の筋組織について、Tractographyを用いた観察をさらに進める。線維走行に特徴的な変化がみられた部位は、長さや角度などの定量データを抽出して解析する。撮像によって胎児の向きが異なるため、角度については基準面を設定する必要がある。そのため、画像解析ソフトだけでなく、数値解析ソフトウェアも併用して解析を進める。また、上記a),b)以外にも関心領域を設定し、全身諸器官を対象とした解析を進め、包括的視点からヒト胎児期初期の発生現象の解明に取り組む。
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